第2話 始発駅


 駅のアナウンスが原宿駅の名を告げた。



 ホームに足を踏み入れ、階段を上がり、暗い構内から春の麗らかな白い光が見えた。



 三月の末の、原宿駅は多くの人が行き交い、新たなステージに胸を躍らせている。



 初めて行く原宿の雑踏を感じて、私はようやく、私は『高校卒業』という切符をもらえたような気がした。



 えぐられるように傷ついてきた、こんな私でも卒業までの切符を与えてもらったからだ。



 流していないはずの小さな涙が、春風と舞う、東京での賑やかさと合わさったようだった。



 今まで、地を這うような絶望しか、私にはなかった。



 けれども、暗いトンネルもいつかは、構内から駅に駆け付け、地上へ舞い戻るように私は、過去と卒業できる。



 東京は、私の人生を描く始発駅のような、かけがえのない場所になった。



 私はこの日のために長い期間をかけて上京し、この東京で、高校を卒業する。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

上京卒業式 渋谷区原宿で迎える卒業式 詩歩子 @hotarubukuro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ