復讐のアイデア

結騎 了

#365日ショートショート 355

 靴紐をきつく結ぶ。左右均等に結ばれたそれを、二度、三度、おまけに四度。ぎゅっと縛り上げる。足の指をぐにゃりと動かし、親指から小指へ、ウェーブのように唸らせる。そして靴紐を緩める。この繰り返しだ。

 奴は皆の前で私を罵倒した。町内会の集まりという小さな場面だが、それにしたって許されるはずがない。酒に酔っていたとしても、私はずっと根に持っている。なんだ、こんな小売りにちょっと成功したからといって。威張りくさりやがって。私は絶対に許さないからな。復讐してやる。お前に復讐してやるんだ。

 次は革靴へ足を通す。しかし、思いの他それは硬かった。ううん、やめよう。内側が布の方が効果がある気がする。なるべく値段の高いスニーカーから順にいこうか。

 視界の端では、店員がこちらを見ている。不安そうな顔だ。馬鹿め、今日ここに奴がいないことは確認済みだ。バイトの君だけだろう。誰にも相談できないのさ。それに、私はただ靴屋で延々と試し履きをしているだけだ。それが何十足、何百足になろうと、責められる謂れはない。

 ざまあみろ。靴下なんて履いてやるものか。まだまだ、あと数時間これを繰り返したら、家に帰って全てネットに暴露してやるんだ。この店の詳細から何から、事細かにな。

 もちろん、私が重度の水虫だってことも。

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