第十七話 悪竜


(シスターは生きながら毒で苦しむのがわかってて自死を選んだのだろう。それにしてもあのダインスレイヴ、隆慈が踏んだだけで破壊された。、、、。そんな簡単に魔剣が壊れるもんなのか?いくら邪竜の力を継承しているとはいえ、、、、いや今はそれよりも。)


「俺は今何をしていた。あのシスターに。」


(隆慈にとっては酷な話だが、あの邪竜についても一度本部に報告しないとな。)


おい大丈夫か?隆慈?


「俺はアイツを殺してしまったのか。俺は人殺しなのか。」


「いや、殺したのはお前に憑いている邪竜だ。それにシスターは自分で自死を選んだ。お前のせいじゃない。」


「だけど、俺は、俺は、、、」


隆慈の顔は青ざめ、震えながら、地面を見つめる。


(俺はコイツと対峙するときが来るかもしれないな。)


そこに敦樹と勇斗も駆けつける。


「おいっ何があった。」

「隆慈は大丈夫か?」


二人はシスターの死体と、震える隆慈という異様な光景に驚愕する。


「おいっこれはどういうことだ。」

「アヴナ!説明しろ!!」


二人はアヴナに詰め寄る。

アヴナは二人を無視し、携帯を手に取る。


「死体が出た。回収してくれ。」


その後二人に「隆慈を頼む。」とだけ告げて、消えていった。




俺はどうすればいいんだ。

気づけば二人に家のベッドまで連れてこられていたようだ。暴走したあとの記憶は定かではない。だがシスターのことが頭をよぎり、うまく寝付けない。


俺はヒュドラの力をアブソープを打倒するチャンスだと思っていたが、もしかしたら周りの人間に危害を加える力なのかもしれない。


俺はどうしたらいいんだ。


俺はため息をつく。


そうして布団を頭まで被り、目をギュッと閉じてなるべくそのことを考えないようにする。

すると、自然と眠りにつくことができた。



俺は気づいたら浅い足首がちょうど沈むくらいの湖に一人佇んでいた。


「これは?明晰夢。」


霧の深い不思議な世界でふと後ろを見ると、

9つの首をもつ巨大な龍が霧を裂き、その一匹が俺を見下ろす。


「お前は我に選ばれたことが不服なのか?」


俺は怖気づくことのないよう、勇気を振り絞って答える。


「お前が人を傷つける存在なら、俺は不服だ。」


龍は困ったように首をもたげ、再び尋ねる。


「貴様があの剣士を守りたいと望んだのだろう?」


俺はそれに苦言を呈するように、


「だが、シスターを殺すのはやりすぎだ。」


しかし龍は真っ直ぐに俺を見つめ、


「守るのに犠牲は必然だ。それに、我の力を制御できていればそんなこともはなから起こらないのだ。」


さらに龍は続ける。


「お前に我の邪悪な意思に対抗できる強い信念があれば我の力を制御できるはずだ。」


そう言って、龍は霧の中へと姿を消した。

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無能力者の邪龍憑依 @tiabod

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