第15話 まなちゃくろーす

 今年も、私はサンタになった。けれど。


「ダメだわ……。お姉ちゃんのプレゼントが、ぜんっぜん、思い出せない……!!」


 とうとう、この時が、来てしまった。


 いつからか、お姉ちゃんは、プレゼントをもらわなくなった。けれど、それがいつか、なんて、十年も昔のこと、覚えているわけがない。


 他のプレゼントは思い出したらその都度、メモして、忘れないようにしていたが。



「もしかしたら、今年、なのかもしれないわね」


***


 まなの横に、相変わらず高いプレゼントを置くと――視線を感じた。


 ずっと、見ないようにしてきたものが、はっきりと、見えてしまって。


 見てはいけないと思いつつ、私は、そちらを向かずにはいられなかった。


「まな?」


 懐かしい、お姉ちゃんの声。本当なら、もう話すことのできない、お姉ちゃんの。


 胸がいっぱいになって。全身の血が勢いよく巡って。早く、去ってしまおうと――。


「願いを、使ったの?」


 その前に問いかけられて、私は、小さく、うなずいた。


「そう。……ちゃんと、大切なことに、使えた?」


「ええ、一応」


「よかった。やっと、安心できそう」


 立ち上がったお姉ちゃんは、私を見上げて。


「まなのことが、いつまでも心配で。もう、まなは一人でも大丈夫だって、分かってるけど。なかなか、離れられなくて」


 すごく、心配そうな顔だった。


「ありがと、お姉ちゃん。すごく、心配してくれて」


「そりゃあ、お姉ちゃんだからね。……あーあ、もうプレゼント、もらえないんだ」


 お姉ちゃんは、私が思っていたより、ずっと、子どもで。


「あと三年、お願いします」


「……まだそんなにかかるんだ」


 けれど、やっぱり、お姉ちゃんで。


 そんなお姉ちゃんの笑顔が、何よりのプレゼントだった。

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どうせみんな死ぬ。~まなちゃくろーす~ さくらのあ @sakura-noa

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