俳句バトラー 轟・死地・GO!!
かぎろ
第一話(終)『やっつけろ! ハイクバトルの 好敵手!』
ハイク・バトル――――令和に在りし、超俳句。五・七・五、そのテンプレに当てはめて……書き込めば、世界は変わる、変わってく!
「バトルだぜ! いくぞライバル! 轟・死地・GOォォォォオッ!」
これこそは 真の俳句の 姿なり!
第一話
『やっつけろ!
ハイクバトルの好敵手!』
【ハイクバトラーをみるときは、へやをあかるくして、テレビからはなれてみてね!】
「遂にここまで来たぜ……!」
熱気、熱気、熱気!
ハイクバトル全国大会の会場は熱い歓声に包まれていた!
その理由は……ただひとつ!
「今日が決勝戦だからだ! オレはここで、ハイジンケッシャのリーダー・バッショマンを倒す!」
コロシアムの中心で、少年が叫ぶ。彼こそは
「因縁の相手……ぜってぇ倒してやるぜ!」
「ククク……」
「っ! この笑い声は!」
イッサの反対側、入口の闇から姿を現したのは……不審なる集団〝ハイジンケッシャ〟のリーダーであり、仮面の男、バッショマン!
「おまえに、この俺様が倒せるかな……?」
「バカにしやがって!」
「ふむ。今の気持ちをハイクにしてみるか」
「なんだと!?」
バッショマンは仮面の奥で嗤い、余裕しゃくしゃくで一句詠んだ!
「弱いので
おまえは俺に
負けるのだ」
「負ける気がしてきた!」
イッサはメンタルが弱い!
《それでは両者、所定の位置についてください!》
イッサとバッショマンが向かい合う! 視線をぶつけ合い、バチバチと火花を散らした!
「行くぞ! あんたには ハイクバトルを 申し込むっ!」
「フン……。挑戦を この俺様が 受けて立つ」
ハイクバトゥ!! ラウンワァン!! レッツシャウト!!
電子音声が鳴り響く!
レディィ……!!
「「轟・死地・GOォォォォオッ!!」」
双方、叫ぶと同時に、場が特殊なフィールドに変わった。ここは意志のチカラが現実となる不可思議な仮想空間。詠んだハイクが本当のこととなるのだ!
「先攻はオレだぜ!」
イッサがバトルタンザクを取り出し、フデでハイクを記していく!
「惑星が
あんたの上に
降り注ぐ!」
五・七・五が現実となり、バッショマンの頭上へと燃え盛る小惑星が落ちてくる!
《おおっとぉ! イッサ君、いきなり得意の地球破壊戦法だー! どう乗り切る、バッショマン!》
バッショマンはニヤリ……と笑って、五・七・五をバトルタンザクにしたためた。
「俺様は
無敵の防御
不沈艦」
「……なんだって!?」
《受け止めるつもりだー! バッショマン、惑星を受け止めようとしています!》
観客席で歓声が上がる。イッサの友達でありライバル、ヨ=サブソン・マンソンも客席から勢いよく立ち上がった。
「そういうことかいな!」
「そういうことって、どういうことなの、サブソン君!?」
メインヒロイン、シキの問いに、サブソンはギチ……と親指の爪を噛みながら答える。
「イッサは普段はメンタル弱者やが、土壇場の意志の力に関しちゃ人一倍強い。せやから初手で地球破壊レベルの一撃必殺ができるんや。自分も巻き込まれるが、小惑星のターゲットを相手に固定している以上、僅かな差で先に相手がリタイアする。今回もその戦法で上手くいくと思うとった……だけど決勝の相手は格が
「さあ、祭囃子イッサ。おまえのターンだ。ほら、あと十秒以内にハイクを詠まねば……」
小惑星が地球へ迫る!
「おまえが死ぬぞ」
「くそぉっ!」
苦し紛れにイッサは一句詠んだ!
「死んだ時
異世界転生
できるんだ!」
《小惑星衝突!! 地球爆発ゥーーーッ!! 滅亡ォッ!! イッサ君、死亡ッ!! しかしなんとか異世界に転生して事なきを得たァーッ!!》
「うまい! これならイッサは敗北を回避しながらチート能力を手に入れられる! いまのはファインプレーなんじゃない、サブソン君!?」
「いいや、シキ……。こいつぁ、余計にピンチなったかもしれへんで」
「ええっ!?」
その頃イッサはチートスキルで異世界を救った勇者として崇められ、ハーレムを築き、富も名声も権力も、すべてを手に入れていた。
しかし、どうしようもなく焦っていた。
バッショマンの追撃方法は、おそらく……
「きゃああああ!! イッサ様!! せ、世界が終わっていきますわーーー!!」
「くっ! やっぱりだ……バッショマンのヤロー!」
イッサが王宮から外に出ると、地平線がこちらへ迫ってきていた。世界が、削除されているのだ。
バトルタンザクに搭載された機能を使って、相手の直前のハイクを表示する。
『作者です
異世界モノを
打ち切ります』
サブソンがうめく。「異世界転生……それは現在、なろう系小説作品のイメージが強い。やからバッショマンは、イッサが飛んだ異世界を小説の舞台と定義し、その作者となることで、世界ごとイッサを消し飛ばす圧倒的著作権を得たんや!!」
「くそぉ……バッショマン! よくも異世界のみんなを巻き込みやがって~っ!」
初手で地球を滅亡させたイッサに言えたことではない! 無情にも消滅していく異世界。しかし次のハイクを詠む権利はイッサにある!
「異世界人
すべてを贄に
オレ、降臨!」
全異世界人を生贄に捧げ、そのパワーによって、イッサは魔王イッサとして再びバッショマンのいる宇宙空間へと帰還した!
「俺様よりクズだろ」
「どっちが悪かってゆうたら断然イッサやな」
「なんなのこれ」
「グハハハハ……! バッショマン。我ヲ倒ス一句ヲ、詠ンデミセロ……! ダガ……」
紫の肌に悪魔の巻角、少年の背丈を保ちながらも筋肉隆々となった邪悪なる魔王イッサは、頬を裂くように嘲笑う。
「異世界転生シタ時ノチートスキルト、億ヲ超エル魂ヲ喰ッテ、最凶ノ存在トナッタ我ニ、刃向カエルナラナァ……!」
「く……! ここまでか……」
ハイクバトルスタジアムが静まり返る。
絶望であった。
その時。
誰とも知れぬ少女の声が響いた。
「がんばえ、ばっちょまん……」
幼い少女の、蚊の鳴くような声はしかし、静寂に包まれていたスタジアムにおいては一際よく響いた。その言葉を皮切りに、声援が集まっていく!
「バッショマン……!」「がんばれ、バッショマーン!」「魔王を倒してくれーっ!」「バーッショマン! バーッショマン!」
「本来逆だと思う」
「バッショマーン! がんばれやでー!」
「サブソン君も寝返る感じなんだ」
スタジアムの観客たちと、サブソンの応援を受けて、バッショマンはふたたび立ち上がる!
「そうだ……俺様には使命がある。祭囃子イッサ、おまえを倒し……世界を救うという使命が!」
「フン……足掻イテミセロ」
「俺様のッ……タァーン!!」
バッショマンのバトルタンザクが黄金に輝く!
「魔の王が
再起不能に
なるほどの」
――――そこでバッショマンのハイクは途切れた。
「グフ……グフハハ……グアハハハハハハハ!!!! 愚カナ!! 我ヲ再起不能ニシタイトイウ気持チダケガ先行シテ、意味ガ通ッテイナイ!! ハイクバトルニ於イテ、ハイクトハ、意味ガワカラナケレバ無駄ナノダ!!」
魔王イッサが哄笑し、紫色の太指でバトルタンザクを構える!
「我ノターン!」
「何を言っている?」
バッショマンはまだバトルタンザクとフデを構えている。
闘志は……潰えていない!
「俺様のターンはまだ終了していないぞッ! くらえ――――これが!」
そして彼は、改めてハイクの続きを紡いだ!
「ハイクを超えたハイクだァーーーッッ!!」
魔の王が
再起不能に
なるほどの
エグい爆破で
内から破壊
「短歌ダヨナ?」
「ハイクを超えたハイクだァーーーッッ!!」
「普通ニルール違反グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
イッサ、爆殺!
ここで試合終了のブザーが鳴り響く!
《決着ゥゥーーーーー!! 全国ハイクバトル大会、優勝者は!!》
バッショマンが、息を吐き、ゆっくりと拳を掲げた。
《不審なる集団・ハイジンケッシャのリーダー! バッショマンだああああああああああああああああ!!!!》
「「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」」」」
「バッショマン……よくやったやで、ほんま……!」
「いい話みたいなBGM流れてる」
【次回予告】
大会で敗北し、拗ねてしまったイッサ。機嫌を取り戻させるために、シキとサブソンはプレゼントとしてケーキを買ってやることにする。しかし、ケーキを持って帰る途中で謎のポエマー・もつをに襲われてしまい……!
次回、第二話『友情は 人間だもの 在るんだなあ』
みんな一緒に! 五・七・五で、轟・死地・GO!
※視聴率低迷につき『ハイクバトラー 轟・死地・GO!!』は第二話以降は放送せず代わりに『にっぽんの美景 ~すばらしき和の世界~』をお送りします。今後とも『にっぽんの美景 ~すばらしき和の世界~』をよろしくお願いいたします。
俳句バトラー 轟・死地・GO!! かぎろ @kagiro_
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