偉業の結果

結騎 了

#365日ショートショート 354

 広場に、急に人が現れた。

 まさに、どこからともなく。無から人が現れたのだ。悲痛な叫び声が響き渡る。出現した人間が、ちょうどその地点を通行していた別の人間とのだ。まるでマッドサイエンティストに改造された哀れな被検体のように、その合体人間は四肢(正確には八肢である)をぶらりと振り回しながら、血を吹いて倒れた。

 あるいは。空から人が降ってきた。どたん。どたん。耳を突き刺す落下音。それも、一人や二人ではない。数百人が一気に、ひとつの塊となって落ちてきたのだ。ビル群に降り注ぐ、人、人、人。血と人塊の海が街を恐怖のどん底に突き落とした。

 なぜ、人間が急に現れたのか。混乱の中、ニュースに登場した専門家が早口でまくし立てた。「現れた人間の素性をいくつかあたったところ、共通項が見つかりました。彼らは五年前、例の事件で失踪していた人間です。忽然と姿を消した、彼らです。姿を消した地点にそっくりそのまま出現しているので、こういった事故が起きてしまうのです。経度と緯度が固定なのでしょうか。消えた瞬間に航空機に乗っていた人は、空に突然出現します。あとはもう、皆さんがご存知の通りです。ああ、なぜこんなことに」

 数時間後。ヒーロー集団のイエンジャーズが、米国にて会見を開いた。

「皆さん、喜んでください。五年前、人類の大半を存在ごと抹消した、かのヴィランを打ち倒しました。よって、負の歴史が修正されました。そう、犠牲になった人々は無事に戻ったのです」

 割れんばかりの拍手が彼らを包み込んだ。

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