ファンタジー世界のお仕事もの、最近好きになったジャンルなのですが、運び屋「兎」のお話は特に面白いです。あ、ウサギさんが鞄からまた顔を……かわいいけどキミじゃないよ。
爆速で駆け抜ける突撃河馬、警備を幻惑させる悪魔梟、水底まで潜る結界亀。
陸海空を制覇出来る魔物は大切な友達で仕事仲間。彼らと心を通わせる「兎」は、通常の配達では届かないもの、間に合わない時間を届けてくれます。
毎回の配達記録の依頼人と配達物のエピソードは単体でも魅力たっぷり、徐々に「兎」のお仕事の理由も明らかになっていきます。
彼女の鞄にいて「兎」の言葉に反応して飛び出してくるウサギさん。ファンタジー世界だしこのウサギさんもしゃべったり魔法を使ったりするのかなと思いきや、ただただスピスピ鳴いてモソモソ餌食べてるだけ、というのもなんとも癒されますね。
さて、私も「兎」に配達を頼もうかな。
主人公はギルドで運び屋をしている僕っ娘の「兎」。依頼の値は張るが、どんなモノでも必ず届けてくれることから、難しい依頼が今日も舞い込む。
例えば囚われの身になった妹を、取り戻したいと願う兄は、妹の配送を頼む。そして目の見えない女性に恋をした男性が、恋文の配送を頼む。海には空気を配達し、病の町には薬を届ける。その結果、「兎」は薬を敵対する領主間に配送したことで、領土間の仲を取り持つことに成功する。
この「兎」の配達には、秘密があった。それは主人公は召喚士であり、召喚獣と契約をしていることだ。この召喚獣たちの手伝いによって、難しい配送もこなしてきたのだ。契約と言っても、主人公と召喚獣たちは友達のようなもので、いつも背に乗せてもらったり、結界を張ってもらったりしているし、召喚獣の好きなモノを与えることも忘れない。
そんな「兎」が配達を頑張るのには訳がありそうで……。
とても楽しく、ユーモアあふれる作品です。
読了後には心がほっこり温まります。
是非、御一読下さい。