エピソード03 「金曜のお楽しみ」と最悪の現実

 午後13時35分。


 昼休憩中は、船体を海底に固定して昼ご飯を食堂で全員と食べるのが、このふねでのルールだ。


 今日は金曜日だ。金曜日に食べるのは海軍カレーだ、理由は1週間のご褒美という意味と今日が金曜日だという事を意識する為だ。


 気になるのは「月曜日のメニュー」だろうから、公言する。体力をつける為に艦内で夏なら焼肉で冬ならフグなどのしゅん食材を使った鍋料理が出る。


 そんな感じでカレーを食べてようとスプーンを一斉に持ち上げた時、遅れてやってきた水中測的ソナー員の綾野あやの夏織かおりの慌てた感じの足音が廊下から響いてきた。


 食堂に入るなり青ざめた表情で艦長の海馬海馬みちるの側まで来ると、「マジで、ヤバイことになりました」と小声で言ってきた。


 口にカレーを運び「一体、どうしたのさ。 普段から大人しい夏織かおりが取り乱して」と笑っていたのだが、次に出てきた言葉でカレーののったスプーンが重力と共に机の上に落ちた。


「日本が、日本が・・・。 滅びました・・・」


 その言葉は、食堂にいた全員を静かにさせた。


「お、おいおい。まだエイプリル・フールでは無いんだぞ?」


 冗談かと期待して言ったが、シーンとしたまま震えて泣き出した。


「え・・・、ま、まじで?」


 コクッと小さく頷いたので、みちる以外は口を開けたまま静かに泣き始めた。


 みちるはすぐに食堂にあるテレビをつけたが、お昼時に放送されている筈の朝ドラの再放送が映らず代わりにカラフルな砂嵐が無限に流れているだけだった。


「・・・。(マジかよ・・・)」


 一大事だとすぐに判断したみちるは青ざめた顔になっていた水中測的ソナー員の綾野あやの夏織かおりに「今すぐ、横須賀に確認してくれ!至急だ」と言い食堂から出て行かせると、その場にいた全員に「レッド・アラートだ、総員戦闘配置について待機!」と声を上げた。


 静かに泣いていた全員がみちるの声で泣き止み、スプーンを置いて持ち場に駆け足で向かい始めた。


 数秒後、発令所に最後に到着した水中測的ソナー員の綾野あやの夏織かおりが一枚の紙を持って入ってきた。そしてその紙を艦長の海馬海馬みちるに手渡した。


 内容を見るとモールス信号の返答だった、内容は{Tokyoとオサカ、壊滅。被害、甚大。 貴艦の任務は中止デ、スグにヨコスカに戻れ!}と書いていた。余程、余裕が無いのがみてとれた。


「操舵長。 任務中止、帰港する」


 操舵長の志田原しだはら歌音かのんに帰港命令を出して急ぎ、第一母港である神奈川県横須賀市にある海上自衛隊基地に戻らせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

WE ARE GONNA FIGHT 'EM ALL @12{アイニ} @savior1of2hero

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ