魔王に負けた後の世界で勇者が成すべきことは?

勇者が魔王を倒したその後の話というのは近頃多く見られるが、本作はそれとは逆に魔王に倒された勇者と世界のその後を描く物語。

魔王に敗れ300年ぶりに目を覚ました勇者イサナ。彼の死後地上は魔族に制圧され、人類の生存圏は宙に浮く空島のみとなっていた。しかし、それでも人類は抵抗を諦めておらず、かつての仲間が作った学校では魔族に立ち向かう若き戦士たちが育っていた。そしてイサナも教師として彼らの育成に関わることに……。

物語の冒頭から人類は絶望的な状況下にあるが、それでも本作の登場人物は誰一人諦めていない。かつての仲間たちは勇者が目を覚ましたことを素直に喜んでくれるし、勇者の偉業を聞いて育った現代の人々も勇者の復活を大いに歓迎してくれて、決して暗い雰囲気にはならないのが大きな特徴。そして暗い雰囲気を払拭する大きな要因として女性キャラが皆可愛い! 味方はもちろんだけど、敵キャラもみんないい味を出している。

戦いの後遺症で魔法が使えなくなり戦力としては微妙な存在になったイサナだが、それでも普段は生徒たちの悩みを聞いて少しでも助けになろうと奮闘するし、決めるべきところでしっかり決める姿はまさに勇者!

まだ未登場の仲間の存在や、300年の間で起きた魔族の変化など、先が気になる要素も随所に散りばめられており、これから先の展開に期待が持てるファンタジーだ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)