「地球外生命体!」 病気の女の子にそうお願いされたサンタはどうしたか

藍条森也

サンタの誇り、見せてやる!

 「地球外生命体!」

 今年、父親から仕事を受け付いたばかりの息子サンタがはじめて受けたお願い。それが、よりによってこの一言だった。

 そんなお願いをしたのはまだ一〇歳にもならない女の子。病院のベッドの上からそうお願いしたのだ。

 「ご本で読んだの。この広い世界のなかで生き物は地球にしかいないって。でも、そんなのさびしすぎる。だから、他のお星さまの生き物に会いたいの。そうすればさびしくないわ」

 女の子は産まれ付きの病気で病院のベッドの上で寝たきりだった。学校にも行かず、友だちもできず、いつもいつもひとりきり。そんな自分に重ねたのだろう。心からそう願った。

 「地球の生き物にも、他のお星さまのお友だちが欲しい!」


 「やれやれ。お前もいきなりとんだお願いをされたもんだなあ」

 引退したばかりのファーザー・クリスマスが気遣うように、嘆くように言った。すると、母親のマダム・ノエルが息子に尋ねた。

 「それで、いったい、どうするつもりなの?」

 息子サンタは当たり前のように答えた。

 「もちろん、プレゼントするさ。それが、おれたちサンタ一族の誇りだろ?」

 「それはそうだが……」

 「地球外生命体なんてどうやってプレゼントするの?」

 「起きる可能性のあることはいつか必ずどこかで起こる。地球に生命が存在する以上、生命の誕生が起こる可能性のある出来事であることは確実だ。だったら……」

 ニヤリ、と、息子サンタは笑った。

 「この宇宙のあらゆる空間、あらゆる時間を探せば必ず、地球以外に生まれた生命体だって見つかるさ!」

 息子サンタはそう言うとトナカイの引くソリに飛び乗った。

 手綱を思い切り煽った。

 「さあ、行くぞ、ルドルフ! 宇宙の果てまで飛んでいってあの女の子の願いを叶えるんだ!」


  暗い宇宙じゃよく光る

  お前の鼻が役に立つのさ!


 そして、その年のクリスマスの日。

 ひとつのニュースが世界中を駆け巡ることになる。

 「先日、墜落した隕石のなかから、明らかに地球起源とは異なる生命体が発見されました……!」


                  完

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