第10話 レシピ

「何、一生懸命、書いとるのやぁ?」

ダンさんが後ろから覗き込みながら言うと、ワテはハッとしました。


慌てて帳面を隠そうとしましたけど。

さっと、ダンさんが持っていきました。


「おお・・・凄い、びっしりと・・・」

ダンさんは帳面をシゲシゲと眺めながら呟きました。


「これ、もしかして・・・?」

「へ、へい・・・」


ダンさんに聞かれて、ワテは正直に答えました。


「小鳥(こがらす)はん・・・女将さんに教わった・・・」

「レシピか・・・?」


言葉の意味は分からなかったけど、ワテは素直に頷きました。


「よう、こんな細こう・・・」

ダンさんは笑ろてんのか、呆れてるのか分からん表情で言いました。


「肉じゃが・・・美味かったか?」

「へい・・・甘おて、ホッコリして・・・」


「肉も初めてやろ・・・?」

「あんなん・・・メチャ、美味かったです」


「野菜も、糸こんにゃくも・・・」

レシピに写し取った、女将からの教えをソラで言えるほど。


「そうか・・・・」

ダンさんは嬉しそうに、自分の手のひらを弄ぶようにして言うたんです。


「そしたら、やってみるか・・・?」

「へっ・・・?」


ワテは何のことか分らんと、ダンさんの顔を見たんです。


そしたら。

ダンさんの顔が、クシャクシャになって。


「やってみよう・・・そうやっ・・・」

ワテの両手を、ギュッと掴んだのでした。


※※※※※※※※※※※※※※※

【写真】

https://kakuyomu.jp/users/9875hh564/news/16816927862974557934


【レシピ】


https://kakuyomu.jp/works/16816927861861529068/episodes/16816927862830810275

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