第11話 新吉の店
「1階が店で、2階がお前の住居や・・・」
ダンさんが得意気に案内してくれはってます。
あれから、半年後のことです。
ダンさんはその間、二、三回は訪れては、例によって小鳥(こがらす)さんちに人力車でいきました。
すると。
いつの間にか、お店ができていて。
ダンさんが案内してくれたんです。
いつもダンさんが仕事してはる堂島の「大阪株式取引所」の近所で。
路地を奥に行って、一見、わからんような所にお店がありました。
珍しいガラス張りの建具越しに店の中が見通せました。
大きくはないけど、20席ほど、食べるとこがあります。
奥が厨房で。
2階が、ワテが寝起きする住居。
六畳が二間と、納戸の三畳が一間あります。
それでも。
ワテが住んでいる長屋の四畳半一間に比べれば。
豪邸です。
それを、ダンさんは。
ワテに。
「土地も建物も、お前の名義や」
「ええっ・・・?」
ワテは驚くしかありませんでした。
だって。
そう、でっしゃろ?
こんな、夢みたいな話。
あるわけ、ありません。
「な、なんで・・・?」
ワテが震える声で尋ねると。
「ふふふ・・・」
ダンさんは楽しそうに笑うだけでした。
それでも、しつこく聞いてみると。
面倒くさそうに、答えてくれました。
「道楽や・・・」
ポリポリと鼻の頭をかきながら。
ポツリポツリと、呟くのでした。
「明治の時代で・・・お前の・・・
小鳥(こがらす)はんの料理を、食いたいんや・・・」
それが。
ダンさんが店を出してくれた理由だそうです。
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「ちょっと、作ってみぃ・・・」
「何が、いいですか?」
「玉ねぎの肉巻きフライは、どや?」
「ああ・・・この間、女将さんに食わしてもろた・・・」
「そや・・・この時代で作れる範囲でええから」
「そうですね・・・ソースとかは無理やから・・・」
ワテは天ぷらの要領でフライを揚げました。
ソースはミソを甘辛にして。
「おお・・・美味いでぇ・・・」
それでも、ダンさんが喜んでくれはって。
少し、自信がつきました。
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【写真】
https://kakuyomu.jp/users/9875hh564/news/16817139555111941527#comment-16817139555112317841
【レシピ】
https://kakuyomu.jp/works/16816927862897194409/episodes/16817139555000498183
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