第9話 新吉との出会い
「大丈夫か、ボク・・・?」
炎の中で見つけた、小さな男の子。
それが、新吉でした。
喉の渇きで衰弱している新吉を背負い。
ワテが辿り着いたのは、贔屓にしている車屋。
「たのむわ・・・」
「へい・・・」
車屋の主人は二つ返事で承知してくれました。
それなりの金を渡したせいもあるけど。
新吉の愛くるしい顔が、女将さんも同じように思うてくれたんでしょう。
二つ下のおみつ、いう娘と。
まるで兄妹のように可愛がってくれたんや。
ワテは時たま、顔を出す程度やったけど。
13年後の明治18年に思い切って、トリップしてみたら。
それは、まあ。
立派な青年に成長していました。
ワテはこの時代が気に入って。
週に一回は訪れるようになったんです。
それが、ワテと新吉の。
小鳥(こがらす)さんちへの訪問の始まりでした。
※※※※※※※※※※※※※※※
「どないしたんや?」
新吉がしゃがみ込んで、地面をジッと見つめてました。
「竹の子・・・」
ポツリと呟いて、素手で土を掘り起こしてます。
「これ・・・女将さん家(ち)で食べたもんと・・・」
ワテは新吉の肩に手をかけ、言い聞かせました。
「あかん・・・竹の子は早朝、芽が出とるくらいやないと」
「そうでっか・・・」
新吉は名残惜しそうに竹林を振り返りながら人力車を引いたのでした。
それくらい・・・。
今日の女将さんの「竹の子の煮物」は美味しかったんです。
シャキシャキして。
噛むほどに、ジュワっと汁が出て。
普通の煮物が。
こんなに、美味しいなんて。
新吉にとって。
驚きの体験やったんでしょう。
※※※※※※※※※※※※※※※
【写真】
https://kakuyomu.jp/users/9875hh564/news/16816927862510155132
【レシピ】
https://kakuyomu.jp/works/16816927861861529068/episodes/16816927862435623166
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます