18話目 重要な話

「フェリデンス、フェリデンス!」




ヴィトゥナーク、メシア教本部の教会にて。

白が目立つ廊下にて、そこを走る男が一人。


「おいお前、フェリデンスを見なかったか!?」

「はい、どうされました?フェリデンス様ならただいま修道士の捜索のため席を外しておりますが」


男はその辺に居た聖職者を捕まえ、フェリデンスの所在を聞く。


「その件のことだ!修道士が攫われたことについて話がある、今すぐにでもフェリデンスを呼んでくれ!」

「そ、そんな無茶な!私のような下っ端の聖職者に偉い方を呼び出せませぬ!」

「じゃあこう他の聖職者に伝えてくれ、"ヴィリーがフェリデンスを探している"と!頼む、一刻を争うんだ!!!!!」


キッと、男性の緑目が聖職者を見つける。

それに合わせ、金髪の髪がサラサラと揺れた。






★★★






「ヴィリー、どうしたのですか?」


しばらくして一室に通されたヴィリーに対し、

遅れてやってきたフェリデンスが首を傾げる。

しかしヴィリーは深刻な顔をしてフェリデンスを見つめた。


「…いいか、これから話す話は物凄く重要な話だ」

「?」

「これはお前んとこで今探している修道士の居場所にも関わる」

「!?」


目を丸くするフェリデンスを一瞥した後、

ヴィリーは一枚のハンカチを懐から出した。


「ちょうど一か月半前、オレの従弟が攫われた」

「…貴方の?」

「あぁ、オレはあまり関わりナシだったがオレの弟がいたくソイツを可愛がっていてな。ある日商店街へ弟と従弟、そしてその双子の妹が買い物に行った際、従弟が消えたらしい」


そしてヴィリーはハンカチを見せつける。


「これだけが落ちていた。そんでオレの家の魔法使いに調べさせたら…」



『どうだ?』

『このハンカチ…中央ら辺に、別の男の指紋が確認できます。そしてこのハンカチには乱雑にしわが出来、砂が付いている。風の精霊に見せたところ、これは捨てられた形跡…』

『落ちたんじゃないのか?』

『いえ、意図的に捨てられたモノだと言っていました。おそらくその男がこのハンカチを捨てたのでしょう』

『…何のために?』

『"テレスコピィ"を使いこのハンカチを更に調べた際…攫われたであろうことがわかりました』

『なんだと!?』



「テレスコピィ…」


フェリデンスが呟く。テレスコピィとは、星体の一つだ。等級が不明であり

あまり全貌が知られていないという星体だが"テレスコピウム"という一つの

星座になると伝えられており、プトレインの星座には含まれないものの

"分析"に優れたものらしく、一端であるテレエスコピィもその力を受け継いでいる。


「オレの従弟はと言ってだな…お前も知ってるだろ?」

「はい、確か以前オリヴィス殿が挨拶に来られた時連れて来ていて…まさか」


何かを察しヴィリーを見つめるフェリデンスに対し、

ヴィリーは小さく頷いた。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

前回の国説明続き+山脈説明。




<エリドサントロー国>

アルトリア山脈に位置する武装国家。彼らは常に"中立"を美徳とし、

どの歴史においても中立国を保っている、通称"永世中立国"。

アルトリア山脈から清潔な水が川となって流れ出ているため

草原が広がり非情に豊かである。


武装国家であるのはその豊かな土地を守るため。何度も土地を周辺の国から

狙われて来た故、代々彼らは傭兵などを仕事として国を守って来た。

それが現代にも受け継がれ、今は自国の防衛がてらヴィトゥナークに

衛兵を派遣している。



<オーストリー王国>

エリドサントローの右上・アイパラスの右隣りに位置する国家で、

音楽の国として名を馳せている王国。

アイパラス共和国の隣であるためか街並みも少々芸術的。

アイパラス王国とは違い王族が温厚な性格であるためあまり争いを好まない。

ただやられる時はやり返すタイプなので、

興味本位でつついたらガツンと思いっきりやり返された国もしばしば。



<アルトリア山脈>

エリドサントロー国・ヴィトゥナーク市国・アイパラス共和国・オーストリー王国に

位置する大きな山脈。

豊かな森林が広がり、水分を含んだ雨がたっぷりと降り注ぐため常に清潔な水が

川となって流れ出ており、麓を潤している。

アルトリア山脈にしか存在しない固有種の動物も存在するため、

エリドサントロー国・ヴィトゥナーク市国が中心となって乱獲防止に励んでいる。

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人生"最期"の異世界ライフ 月出 四季 @autumnandfall

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