外伝 ホカンキョリ
男達の恋愛(たたかい)
「はぁ……」
普段は健康の為に階段ばかり使う自分にしては
マンションの玄関を抜け、完全に視界で捉えられなくなった頃。
悲しいかな、その冷たさが、今だけは
「大丈夫ですか?」
そう言いつつ、
彼が驚きつつも顔を上げると、そこには教え子であり、飲み友達。
そして数日前からは協力者の、
「……頂きます。
どうして、ここが?」
「この前、二人で呑んだ時に、言った
『
これも、協力の
そう。
彼と一杯行く時は、いつも決まって
で、蓋を開けてみたら、
『健啖家』だとか『ポテトや揚げ物、それからグルメ·ツアーが好き』だとか、それ
他に気になった点が
が、それは彼が、裏で
で、そんな少ない情報で彼は、落ち込んだ
こうして、待ち構えていたという
「君は……中々に恐ろしいですね」
「先生と
さて、そんな
ペット·ボトルの中身を飲み干し、きちんと分別した上でゴミ箱に向けて投擲する
2つの物体は、それぞれに綺麗な弧を描いて別々のゴールに入り。
その音をゴング代わりに気を引き締め直した
「トホホに暮れてる場合じゃないですよ、先生。
作戦開始と行きましょう。
先生も
正解ですよ。ただ構ってちゃんしてるだけなので。
しかも、あっちも先生に惹かれつつあるんで、お年頃ならぬオトシ頃ですよ」
と思ったら、いつも通り。
上手いのか面白いのか判別の難しい、
「わ、分かりました。
ご指導ご鞭撻の
「ま、何とかしますよ。
現実の恋愛とは無縁ですが、
小舟に乗った
「は、はい!
ところで、あのぉ……それって、
「泥舟よりかは
「い、いや、まぁ……」
そういう問題ではない気がしたが、これ以上、否定的な反応を見せて機嫌を損ねても困る。
なので、
「そこで、俺の出番なんスね」
「おわっ!?」
二人だけとばかり思っていたベンチの裏からノソッと、まるで熊の
というか絶賛、受け持ち中の生徒、
「え、え!?
「これからの作戦にもう一人、寡黙な協力者が欲しかったんですよ。
で丁度、ここに来る前に最適な男が見付かったんで、
先生の知り合いってのも好都合ですし。
あと、意外に芸達者ですし。
クールなんだけど、静かってだけで決して冷たくも棒読みでもなく、決める時には決めてくれるっていう、最高の塩梅ですよ」
「うっす。
俺も、先生には日頃、良くして
「って
自慢の生徒、立派な教師っ
「そ、そんな、
僕はただ、一杯一杯なだけでして……」
「ま、ま、ま、そう言わずに。
ほい、握手、握手」
そしてスクラムを組む。
「じゃあ、作戦の説明だ。
で、あの人間不信の
確実に、『最後にそれの外す方に賭けを持って来る』だろうから。
そこでは、バッチリ決める。
「委細承知っス」
「固いのか砕けてるのか分からんが、まぁ
で、先生。キツいでしょうけど、先生は
俺が
そこまでシナリオ、作戦通りで行くと、
「あ、アドリブですか?
すみませんが、些か不安ですね」
「そんな重く捉えなくて
先生らしく、ドーンと当たれば
信頼、信用してるんで」
「同感っスね。
先生は普段からバフかかり捲りなんで。
「は、はぁ……」
よく分からないが、好意的ではあるらしい。
なので、
「もう少しで親父が、あの質の悪い酔っ払いに手を拱く頃だ。
このままじゃ、ターゲットが逃げるのも時間の問題。
俺達の領分じゃなくなるのは、
一発で決めるぞ。
それと、先生。
待ち伏せは、無しの方向で。
いきなり先生が現れたってだけで向こうは取り乱すんで、明らかに苦しくなければ言い訳を通せると思うので」
「
「お、
一通り概要を説明したタイミングで、
意図を取った二人も続き、三人は右手を重ねた。
「行くぜ。
あの分からず屋に、たっぷりと熱いお灸を据えたらぁ」
「あ、あのぉ……どうか、お手柔らかに……。
決して悪い
「どっちスか?」
「両方だよ」
「ロジャっス」
「いや、察し
話、
理解力と適応力っ!」
「ところで。
「彼女作りっス」
「おまっ……!?
一晩で二カップルも作ろうってのかよ!?
どんな猛者だよ、とんでもねぇな! 願ったり叶ったりじゃねぇか!
これで手放すには惜し過ぎる逸材だ!」
「
こうして
男達の
シャカンキョリ ー三姉妹(かとりけ)の再生ー 七熊レン @apwdpwamtg
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