第8話:カモかも?

 カモを見つけるのが私の役目だった。アイツは金払いいいから、やりがい“だけ”はあったわ。『あのパーティーに参加すると運が開けるわよ!』なんて胡散臭い噂まで流したりしてね。

 そしてそれとは別に、カモを篭絡してギルドの仕事を受けさせた。ギルドからの仕事斡旋と言っても情報料は貰うの。私はその窓口。普通なら銅貨一枚程度の仕事でも、あのしつこい男には金貨三枚で売り付けてやったわ。それでも安い位よ。毎日毎日ベタベタと、あ~気持ち悪い。

 手作り弁当? ああ、裏に住んでるババァが『ギルマスに』って毎日持ってくるのよ。ジジババ同士仲いいわね。そのよくわからない物を適当に詰めただけ。え? 弁当袋にキスマーク? それもババァのでしょ、多分。


 そういえばあの男キュア夫の噂を全然聞かなくなったけど、まだ騎士団に追われているのかしら? それともすでに? ま、今更どうでもいいけどね。ギルドにいれば次のカモは勝手に飛び込んでくるし、当分はここでのんびりとやろうかな。


 ……のんびり、か。


 ……うん、邪魔よね、アイツヌスッタの存在。色々バレても面倒だし、そろそろ。無味無臭のやつ。





 ギルド入口の扉が『ギイィ……』と音を立てて開いた。


「あのう、冒険者ギルドに登録したいのですが……」

「あら、いらっしゃい」

「ここで良いのですよね?」

 まだ二十歳になったかどうかくらいで身なりは普通。顏は中の上。私と視線が交わった瞬間目が泳いだのは、経験なしと見ていいわね。

 胸の谷間がしっかり見える様に、軽く前かがみになって上目遣い。さくらんぼ君はこれでイチコロ。耳まで真っ赤にしてカワイイじゃない。


「ええ、こちらですわ」

「よ、良かった。田舎から出て来たばかりで、その、何もわからなくて……」

 腰の袋がかなり重そう。全部吸い上げれば三年は遊んでいられるかしら。




「ようこそ、冒険者ギルドへ。私、斡旋担当の乃木坂と申しますの。以後お見知りおきを♡」


              


                  完

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追放しただけなのに。~仕組まれた成り上がり~ 猫鰯 @BulletCats

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