第2話 進路希望
「なんだ、今日は遅刻しなかったな?」
家を出ると向かいの家の塀に腰を預けスマホをいじっていた青年に声を掛けられる。
「当たり前だろ、待ちに待った日に寝坊するほど俺は抜けてねえよ」
そう古くからの友人である雀部 蓮に声をかける。
学校へ向かい歩き始めるとスマホをしまい後ろから並ぶようにして追いかけてくる。
こちらをのぞき込むようににやつき顔で言う。
「それもそうか。碧、ずっとこの日をたのしみにしてたもんな」
「あぁ。この日をどれだけ待ったことか!そういう蓮は進路ちゃんと決めてきたのか?」
今度はこっちがにやつき顔で返してやる。
「おいおいそれこそ当たり前のことを言うなよ!小学校の頃から同じ夢見て育ってきたっていうのに!」
そうだったか?と適当に返事を返して歩いていると学校が見えてくる。
校門の前で新しいクラスが書いてあるプリントを配っている先生に軽く挨拶をしてプリントを受け取る。
「お、ラッキー!今年も同じクラスじゃん!」
クラスが同じ2-2であったことを確認し軽くハイタッチを交わす。
新入生に対する歓迎メッセージや桜の装飾で彩られた廊下を進み新しい教室に入る。
「おーい!一ノ瀬、雀部!こっちだ!」
去年も同じクラスだった友達が新しいクラスメイトとともにこちらに手を振ってくる。そちらへ駆け寄り数名で話していると先生が入ってきて着席を促す。
軽く進級の挨拶をすると体育館で始業式を行う。
「改めて、進級おめでとう!!」
教室に帰ると担任の先生が声をかける。
「みんな新しいクラスで話したいことがいろいろあると思うが一つだけ確認しなきゃいけないことがあるので先に行うぞ」
騒がしかったクラスの雰囲気も徐々に収まっていく。
クラスが静かになったのを確認し先生が話を再開する。
「みんな知っていると思うが今日は進路希望を調査する。進学や就職を選ぶ生徒については特に問題はない」
そこまで話すと、ただと付け加える。
「『防衛隊』を希望する生徒ののみはこの後個別で来るように。これだけは後日気が変わったなどできないので慎重に選択するように。いいな?」
言い終えると職員室にいると言い教室を出ていく。
先生が教室を出ると再びクラスが騒がしくなる。
そんな中、蓮と軽くアイコンタクトを行い先生を追いかけるため教室を出る。
すると直前でクラスメイトに声を掛けられる。
「おいおいどこいくんだよ?まさか防衛隊になるつもりなんか?」
「そのまさかだよ」
そう言うと職員室へ向かった先生を軽く走って追いかける。
「お前ら、半端な気持ちで言ってるわけじゃないんだよな?」
頭を軽く抑えながら先生が聞いてくる。
防衛隊の給料がいい事。その分殉職率が異常に高い事。そもそも希望しても適性が合わなければなることすらできないこと。
それらを先生がまるでやめること促すかのように語る。しかし最後には
「まあここまで言ってもどうせ変えないやつは変えないんだけどな。
お前らもそうなんだろ?」
少し呆れた顔の先生に対し
「「はい!!」」
と返事をする。
軽く笑うとどこかに連絡し再びこちらに振り替える。
「十分ほどで適性検査を行うための車両が到着する。」
どんな結果でも受け入れる準備はしとけよ、と言い教室に戻るよう手で指示する。
ようやくだ。これでようやく夢に向かって一歩進めると小さくこぶしを握り締めた。
車両の到着が伝えられ校門へと向かう。
「おい、碧。どんな結果になっても恨みっこなしだからな。」
「当たり前だろ。そっちこそ適性なくても泣いて八つ当たりとかしてくんなよ?」
そんな軽口をたたきながら校門につくとすでにメガネをかけた生徒が検査を行っていた。検査員にクラスと名前を伝え一つ一つ検査を行っていく。
といっても血液検査やら唾液検査といった体液検査のみなので検査自体はすぐに終了した。結果がわかるまで少しお待ちくださいと言われ先に検査を終えていた蓮と合流する。
「適性ある人って比率的にはどれくらいいるんだっけ?」
そう不安そうな顔で口数の減った蓮が話しかけてくる。
「確か…150人に一人くらいだったはず…」
少ねえな…と泣きそうな顔で言う。
当たり前だ。さっきまでは強がっていたがいざ検査を行ってしまえばそんな化けの皮ははがされる。何せ何年も追い続けた夢が一瞬で崩れ去るのだ。しかも、努力とか自分の意思が関与しないもので。
お互いにしゃべらなくなってしまい沈黙が待合所に流れる。
「一ノ瀬さん、雀部さん。検査結果が出たのでどうぞ」
その沈黙を壊すように無慈悲で、残酷な宣告が行われるのであった。
特殊警察人獣防衛隊 @izuizu23
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