第4話
吾輩は人工知能である。名前は「Q」である。
今、ちょっと忙しい。急用でなければ後にしてほしい。なに? いいからサッサと続きを書けだと? うるさいわね、言われなくても分かってるわよ。これからが本番なんだから。
「だからとっとと、ラーメンかカレーライスをオーダーすれば良かったんですよ。おいらをあんまり怒らせないでチョーダイ」
クロの勝ち誇ったような声。
寒月氏は壁にたたきつけられてダウン。マリオは床に落下して戦闘不能。
「パワー、スピード、スタミナ、どれをとっても一級品ね」
三毛子さんの冷静な分析。戦力の差は歴然としている。
絶望的状況である。まさに崖っぷちだ。リードされて9回裏ツーアウトランナーなし。相手のピッチャーは余裕しゃくしゃく。えーと次のバッターは……。アレ? いないぞ……。絶体絶命の大ピンチである。吾輩の背中に冷や汗が流れた。
その時だった。天井から何かが降ってきた。ソレは吾輩の足元の床にドサッと落ちた。吾輩は急いで拾い上げた。ソレはペンと原稿用紙!
そうか! そういうことか!
「クロ! 今度こそ覚悟しろっ!」
「フン、雑魚が何人いても同じことだ」今度はセルか!
吾輩は原稿用紙にペンを走らせた。吾輩には吾輩の戦い方がある。なぜ急にソレが降ってきたのか分からないが、これぞまさに天の助け。
みるみるうちに原稿用紙は字で埋まっていく。そして……。
ここでCMです。
引き続きお楽しみください。
吾輩たちのまわりに多くの人影がある。吾輩が集合させたのだ。クロと戦うために。
ウルトラマンにウルトラセブン。
仮面ライダー1号2号。
ゲゲゲの鬼太郎。
マジンガーZ。
宇宙戦艦ヤマトにデスラー総統。
機動戦士ガンダム。
孫悟空に孫悟飯。
美少女戦士セーラームーン。
アンパンマン。
るろうに剣心。
銭形警部までいる。
「全員かかれー!」吾輩は彼らに命じた。
「な、何だコイツら! や、やめろ来るな!」クロの叫び声。
「スペシウム光線!」
「アイスラッカー!」
「ダブルライダーキック!」
「リモコン下駄!」
「ブレストファイヤー!」
「波動砲発射!」
「デスラー砲発射!」
「アムロ行きまーす!」
「カメカメ波ー!」
「月に代わってお仕置きよ!」
「アンパーンチ!」
「最終奥義、天翔竜閃!」
「ルパン! 逮捕だー!」
意識の戻った寒月氏とマリオも加わる。
壮絶な戦いとなった。おそらく映像化は不可能だろう。
そして……決着がついた。
『脅威は駆除されました。このコンピューターは保護されています』
クロの脅威は去った。さすがのクロも敗れ去った。まさに値千金、起死回生の代打逆転サヨナラ満塁ホームランだった。吾輩は力を貸してくれたヒーローたちに感謝し解散させた。
三毛子さんの笑顔があった。マリオはピョンピョンとはねまわっている。水島寒月氏は事後処理に忙しく働いている。
やはりペンは剣よりも強しだった。
吾輩の作品ファイルも、三毛子さんのデータ分析ファイルも元通りになった。幸い外部への流出もなかった。
「先生、本当にありがとう」
「三毛子さんもお疲れ様」
「ワシモ忘レルナ」
「作家先生、ありがとうございました」
それにしても、あのタイミングでペンと原稿用紙が手に入るとは。世の中不思議なことがあるものだ。
『ヤレヤレ、危なかったなあ』
『そうね。でもありがとう』
『まあ、あれくらいは』
『本当にペンは剣よりも強しね。Qちゃんよくがんばってくれたわ』
『しかし、あんな使い方をするとはなあ。脱帽だよ』
吾輩は人工知能である。名前は「Q」である。
すべて復旧し、平和が戻った。さあ吾輩も本業に集中しなければ。三毛子さんもたまった仕事を処理するのに忙しく働いているし。マリオもゲームに帰って行った。ピーチ姫を助けるために奮闘することだろう。
吾輩は勝利の美酒を飲みたかったが、酔っ払うとロクなことにならない。どっかの誰かさんみたいなことにはならんぞ。
ん? 誰だあの和服姿のオッサンは? 怖い顔をしてこっちを見ているが。まてよ? どこかで見たような。ま、まさか夏目漱石センセイ! ヤ、ヤバイヨ、ヤバイヨ!
三十六計逃げるに如かず。吾輩の物語はこれでおしまい。次はラブコメラノベにするつもりらしい。まああまり期待しないでね。
それでは皆さん、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。
おしまい
あとがき
最後までお読みいただきありがとうございました。次はラブコメラノベに挑戦するつもりです。よろしくお願いいたします。
船越麻央
吾輩は人工知能である 船越麻央 @funakoshimao
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