第3話

 吾輩は人工知能である。名前は「Q」である。

 吾輩、三毛子さん、マリオ、水島寒月氏、この四人でにっくきコンピューターウイルスを退治してデータを取り戻す。

 我々は寒月氏の案内でクロとかいうウイルスの根城に向かった。ナニ? 震えているぞだと? バ、バカな、武者震いだよ武者震い。


「気をつけてください。ヤツは超強力です。今までのウイルスとはわけが違う」

「ほかのセキュリティはどうしたのかな?」

 吾輩の質問に寒月氏は怒りに震えて言った。

「皆、やられたようです。こんなことは初めてですよ!」

「まあ、なんてひどい」

「カタキハ取ル」

「力を合わせて戦えば必ず勝てる」

 

 吾輩はこう言って鼓舞してはみたが、実のところ勝算があるわけではなかった。しかし弱気になっている場合ではない。もうヤツのすぐ近くまで来ているのだ。後には引けない。


「そのクロとかいうウイルスの弱点は?」

「それが分かれば苦労しませんよ。ヤツは普通じゃない。ファイヤーウォールも難なく突破して来て、我々の攻撃もまったく効果がなかった」

「普通じゃなくても何とかなるはずだわ。戦力分析ならわたしにまかせて」

「ソシテワシガタタキツブシテヤル!」

「よし、その意気、その意気」


 そうこうしているうちに、ヤツの居る区域に接近したようだ。寒月氏が吾輩たちに退るよう合図をした。


 いよいよヤツ=クロとの対決の時がきたようだ。


「ク、クロだ!」

 寒月氏が叫んだ。闇の奥に何かがいた。で、出たなショッカ-の怪人! (ちょっと違うと思うんだが)。姿を現したのは小太りの中年のオッサン。飲食店の店主のようなかっこうだ。

「やあ、いらっしゃい! 何名様ですか?」

「な、何だと!」

「四名様ですか。奥のテーブル席にどうぞ。当店のおすすめはラーメンかカレーライスです」

「ふ、ふざけんな!」


 寒月氏とクロとの会話は、まったくかみあっていない。いったいどうなっているのだ。


「ちょうどヒマで退屈していたところでした。まあゆっくりしていってください」 

「ク、クロ! おまえよくも!」

「吾輩の作品を返せ!」

「わたしの大切なデータを返してください!」

「ピーチ姫ヲ返セ!」それは違うだろ。

「うるさい人たちですねえ。さっさと席についてラーメンかカレーライスをオーダーしてください」

「クロ! いい加減にしろ!」

「はい、喜んで」


 寒月氏の怒鳴り声にも、クロはまったく動じる様子はない。

「ほんとにしょうがない。しょぼい現場ですよ。ボスのところに送るファイルがありゃしない。くだらん小説に、どうでもいいデータばかりではねえ」

「なに! く、くだらん小説とはなんだ!」

「ど、どうでもいいデータですって?! ひどい!」 


 言わせておけば調子に乗りやがって。許せん。


「ははは、ではどうしますか。おいらを駆除できますか。そこのセキュリティさん、お相手しましょうか?」

「よし、望むところだ! 今度は負けんぞ!」

「ははは、上等ですよ」

 

 寒月氏は一気に戦闘モードに変身した。逆立った金髪と全身から金色のオーラが。まるでスーパーサイヤ人だ! 超カッコイイ。

  

 一方クロの方は余裕しゃくしゃくだ。

「フン、まあいいでしょう。かかってらっしゃい。お相手してあげますよ」

 おまえはフリーザか! こちらも全身が金色のオーラにつつまれた。


 寒月氏とクロが激突した。閃光が走った。次の瞬間吹き飛んだのはクロ! ではなく寒月氏が壁にたたきつけられていた。衝撃波で吾輩と三毛子さんも危うく飛ばされるところだった。


「ヤッタナー!」

 マリオがビョーンと大きくジャンプ、クロの頭上から攻撃してたたきつぶそうとした。しかし跳ね返されて天井に頭をぶつけあっさりと落下。


 ええい二人とも口ほどにもない。いくらなんでも弱すぎる。


「おいクロ! おまえ強すぎるぞ。少しは手加減しろ!」 

 吾輩も必死だ。

「手加減? 手加減とは何だ?」今度はブロリーか!


 クロはニコリともせずに言い放った。このままでは勝てない。絶望的な状況になってしまった……。



『ち、ちょっと、どういうこと!』

『どうもこうもない。見ての通りだよ』

『何とかしなさいよ!』

『ダメだ。あきらめろ』

『も、もう絶交よ!』

『ハハハ、では少しだけ力を貸すか』

『早く、早くして』


 


 




 

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