第6話 管理
「で……あれ、どうしよっか……?」
魔王幹部は倒した。
とりあえず一難去った。
が、目の前で勢いよく炎を上げている研究所。
とりあえず、消防車呼んだ方がいい?
でもここ、秘密機関だからな……。
ゴゴゴゴゴ。
悩んでいると、地面が大きく揺れだした。
まるで地下深くからなにかが上がってくるような。
「愚かな人類よ……」
「……っ!」
地の底から、声が轟く。
「我が封は解かれた……旧き神の時代が再び訪れん……」
ドゴーーーンッ!!!
「うおおおっ……!?」
建物を破壊して現れたのは、巨大な右腕だ。
「あ、あれは……!?」
よくわからんけど、なんかヤバそうだな!?
きっとトップの人間しか知らないような、世界滅亡クラスの化け物だろう。
そんなもの、僕達でどうにかできる範疇を超えている。
「あのー、大変残念ながら諦めるしか……」
「鈴木さん!!!」
諦めムードを出していると、真くんに喝を入れられた。
「だってー、ほらー、あいつー、旧き神とか言ってるぜー? もう僕達どころか、人類全員が協力しないとどうにかならないぜ?」
「でも、諦めるわけにはいきませんよ」
「佐藤くん……」
「鈴木さん、頑張りましょっ!」
「えー、あぅー……」
皆の勇気には敬意を表する。
だけど……。
無理だと……思うけどなぁ。
「羽虫共……散るがいい……」
「ああっ!」
旧き神(仮)の広げた手のひらに火の玉が現れる。
それはどんどんと大きくなっていく。
「うん……」
やっぱ……諦めよう?
あんなのどうしようもない。
「消えろ」
「……っ!」
火の玉が放たれた。
どんどんドでかくなる。
近づいてきているんだ。
視界が真っ白に染まる。
が。
「あれ?」
熱くない。
急に何も感じなくなった。
これが死か……?
「まったくー、仕方ないなー」
呑気な声がした。
「今回は特別だからね」
その声が聞こえた瞬間、視界が元に戻る。
火の玉は跡形もなく消え失せてしまった。
「あ、あれ……?」
それだけじゃない。
巨大な腕も、建物の炎も消えた。
燃えていないし、前のままだ。
「どういうことだ?」
なにが……起こったんだ?
「ホントはダメなんだよー? 他の世界に干渉するのは」
スタッと空中から降り立ったのは、フードを被った人物。
背丈は太一くんほどで、まだ子供のようだ。
「君は……」
「管理人さん……」
管理人……?
どこかで聞いたことが……。
「「ああっー!」」
僕と真くんは顔を見合わせて叫ぶ。
「あなたは、シスエラ世界を管理している!?」
「そうだよ?」
「どうしてここに!?」
「僕だって来たくて来たわけじゃない。呼び出したのは、君達だろ?」
「あー……」
なるほど。
彼もまた、本棚の力で召喚されたんだ。
「それで、さっきのはどういうことなんですか?」
「あー……なんで生きてるかって?」
「はい」
「この世界の怪物は管轄外なんだけどー、いかんせん原因がシスエラ世界の魔王幹部でしょ? 責任とらなきゃなーと思って」
「責任とる……って、具体的には?」
「戻しといたよ、時間を」
「時間を……!?」
さらっとすごいことを言ってのけた。
「いやまあね、世界規模じゃないよ? 大変だし。けど、この周辺で起きたことは全部戻しておいた」
さすが管理人、レベルが違う。
全てをなかったことにできるなんて。
「それじゃあ……みんなは……」
「助かってる……というか、彼らは死んだことさえ知らないさ。全部元通りだ」
「よ……」
「よかった……」
安心感から、その場にへたり込む。
「あれ、ということは」
なんだかあっけないけれど(けっしてあっけなくはないが)、これで終わり?
【外伝・SSS(スペシャル・センス・サバイバー)】 〜欠けたなにかと交ざったもの〜 砂漠の使徒 @461kuma
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