第20話 厨二心は転生しても治らない

 あれおしのびから一月くらいが過ぎた。


 なんか最近はメイド服を着たメイドをよく見かけるようになったわ。


 騎士団の訓練場から王宮の方を何気なく眺めていると、忙しそうに動き回るメイドさんが見える。


 アリアに『好きにしていい』とは言ったけど、これほど一気に増えるのは予想外だったわ。もしかしたら城勤めのメイドの全員がメイド服を着てるのかしらね?そもそもアリアに言ってから、まだ半月くらいしか経ってないのよね。


 よくもまあ、こんな短期間で用意したものだわ。あの古着屋のお姉さん、巻き込まれてないといいな。


 そんなわけで、メイド服を見る機会が増えたんだけど、そこでようやく重大なミスをしていたことに気が付いたのよね。


 何かというと、メイドさんの頭に付けている所謂いわゆるヘッドドレスを作るのを忘れていたわ。ヘッドドレスの無いメイドさんなんて、イチゴの無いショートケーキよ。断じて認めるわけにはいかないわ。


 そうなってくると、またあのお店に注文しに行かないとダメね。


 ただこの間の一件で、すぐには城下町へ行かせてくれそうも無いのよね。


 ま、その事は追々考えましょうかね。


 今はそれよりも魔法の練習をしないとね。なにしろ折角の休憩時間で、一人でいられる貴重な時間なのだ。


 どういう事かと言うと、わたしは今でも礼儀作法の勉強の合間に、騎士団長さんに剣術を教わってるのだ。『剣術が楽しかったから』という名目でお父様にお願いしたら渋々認めてくれたわ。


 もちろんそれは半分建前で、そうすれば屋外で一人の時間が作れると思ったからね。それに、外ならば魔法が暴発しても誤魔化しやすいと考えたのもあるわ。結果はほぼわたしの思惑通りになったわね。


 でも、騎士団の訓練場ここに意外と人が多かったのは計算外だったわね。以前来たときはそれほど人はいなかったと思うけど、記憶違いだったかしらね。


 そんなわけで今練習しているのは、視認性の低い風というか空気を使った魔法だ。こう指で空気の塊を弾くみたいな感じで攻撃したいのよね。


 元ネタは前世で見た漫画の主人公の某種馬さんが偶にやっている『パチンコ玉を指で弾く』よ。小学生の頃だったかしらね、子供ちゅうに心をくすぐられたのを覚えてるわ。この世界にはパチンコ玉は無いので、代用品として小石も候補の一つだったんだけど、使い勝手が悪かったので空気を利用できないかと思い至ったんだよね。


 空気を使うんだし、某ネコ型ロボットの空気砲も考えたんだけど、イメージが巧くできなかったのよ。実は空気砲こっちの方が予備動作も無くできるし、隠れて使うにはもってこいだったのに残念だわ。


 何度か試してみた結果、空気の塊を作り出して、前に飛ばすことはできたけど、威力が弱々なのよね。


 これ、『指で弾く』というイメージだから弱々なのかなあ?


 確かに、今のわたしようじょの力だったらこのくらいの威力にしかならないかも知れないわね。


 だったら『指で弾く』動作をトリガーにして、秒速二百メートルで飛ぶ。っと、このイメージでどうかな?


 そう思い描いて指を弾くと『パシュッ』と乾いた音がした。


 「へ?」


 思わず変な声が出てしまったわ。


 音だけで分かるわ。これは無闇に人に向けたらヤバいやつだ。何の気なしに斜め上に向けてて良かったー。


 でもまあ、実験は成功かしらね。あとは速度の調整で威力はどうとでもなりそうかな。


 

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転生したので今度こそ選択を間違わずに暮らしたい 旦月双一 @stangetu

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