好きも嫌いも、愛も憎も、時に不可分で表裏一体なのかもしれない。
読後、そんなことを思いました。
行動だけを追えば、主人公はずいぶんと優に対して酷い言動を繰り返しています。
傍から見れば、憎んでいるようにしか見えないでしょう。
主人公自身も、優に対して憎しみめいた感情を抱いている局面が多々あります。
……しかしそれでも、そこにあるのは憎しみのみではない。憧憬も確かにあった。
依存めいた複雑な二律背反が、みごとに描き出されています。
しかし、愛憎が相半ばするのはあくまで主人公の内面のみ。
優にとって、主人公はとうに「その他大勢」なのだろうとは垣間見えます。
そこまでの主人公の行動を考えれば、仕方がないとは思うのですが……この残酷なギャップも、また見事に描き出されていると思います。
外界から置き去りにされていく、どこか依存めいた空回りする心情。
その機微も、残酷な末路も、堪能させていただきました。