第11話 虚な義務
夏季休業というのは、1881年に文部省が都道府県に出した小学校教則綱領で休業日を定めたことがきっかけで誕生した。当時の校舎には冷房設備がない場合が多く、日本の気候も相まって、授業を実施するのが困難であるという理由から始まった。あくまで在宅授業であるため、生徒は学校の出す宿題を代わりに行うのだ。欧米諸国の制度を参考にしたという話があるが、本当かどうかは定かではない。そもそも今の時代、空調設備の整っていない校舎など存在するのだろうか。また、科学の進歩に伴い学生に要求される学習内容は年々肥大化している。インフラ整備やカリキュラムの見直しなど、私はすべきだと思うのだが、専門家の間では現状が最良だと考えているのか、それともただの怠慢か。どちらにせよ…くだらない。だが、夏季休業自体は私にとって有益であると思っている。大抵の学生に当てはまるだろうが、自主学習の方が、学校での学習よりも効率が良いのだ。私の場合、そもそも比較対象など存在しないのだが。しかし少なくとも、私は今の時間を有意義に過ごしているという自覚がある。制度自体の有効性の有無を私は言及することはしないが、それを活用するのは間違いなく有効だろう。
有意義なのは間違いないのだが、それでも私の自由を奪うものは存在する。俗に言う「お盆」である。そもそもは盂蘭盆会が由来であるのだが、神仏習合の下で生まれた日本の行事である。日本に定着した文化とはいえ、信心深い訳でもない、ましてその本質も理解せずに行うというのはどうかと私は思うのだが、大抵の人間には関係ないらしい。かくいう私も無信心者であるため、本来なら関係ないのだが、父方の家が由緒ある家柄、俗に言う旧家であるため、親族はこの時期になると集まらなければならないらしい。
万人に畏怖と敬意の念を抱くのは素晴らしいことであると思う。当然それは祖先も含まれる。しかしながら、それが私を拘束する理由にはならない。物理的な問題は私には関係無いことであり、非科学的な問題など論外である。そう理解しているにも関わらず、学生という身分であるために付き従わなければならないとは…甚だくだらない。
こんな学生も、世の中にはいるのだ。 テラ・スタディ @Teratyan
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