第47話 ~潜入計画~
「のっ!? 呪い!?」
「アケビ、声っ! 声が大きいっっ!」
「あっ、ごめんなさい。余りにも展開が急で……しかも期待をしていたのに、
雪がまだ少し残る、長い冬休み明けの初日――私とアケビは学院の食堂で『密談?』をしていた。
この日は講義無しの午前中までなのだが、午後からクラブ活動に参加をする生徒の為に、食堂は解放されている。
なかなか生徒が帰らない教室に居残っても、誰が聞き耳を立てているか分からない。
特に文化的交流会後は『執事効果』から、2人で居ると視線を感じたり、声を掛けられる機会もより一層増えた。
食堂であれば広いし、今日に限っては人もまばら……ナイショ話にはちょうど良かった。
「それでっ!? 犯人は誰なの?」
「見当もつかないわ……それに殿下本人にも、不審な点があるのよ」
「不審? まさか……自作自演でもしたの?」
さすがはアケビ。直感までも鋭い。
「まあまあ近いかな? 私は全部ではないと思うけど。でも従者や護衛を眠らせてまで単独行動をしたのは事実だし、それに……」
「それに?」
「彼、ヤプが見えていたの」
「――!? それって、殿下が『魔法使い』だという証拠じゃないっっ!?」
「私と同じ
頭脳はともかく普通の人間であるアケビには、妖精姿のヤプは見えない。
彼を認識できるのは魔法使いか、私と同じ転生者のみだ。
「何だか、色々と複雑になってきたわね……」
アケビが溜め息を吐く。
「ええ。もう『何をどうすればいいの!?』って感じ。せめて怪しさ満載の王城に潜入でもして、手掛かりを探ればいいのだろうけれど、暫くは舞踏会もないのよね」
「……それなら任せてっ! 私が『本選』に行くだけで、潜入問題は解決するわ!」
「えっ、本選?」
「そう『スピーチ大会』のね! その舞台は王城なの。後1回だけ選考(予選)会をパスすれば、貴女を応援団(友人枠)として招待できるわ!」
「うっそっ! 本当に!?」
「ええ! ……ただ少し問題があって、予選最後の主題が『魔法と戦争』なのよ。これまで9回も参加をしてきたけれど、こんなテーマは初めてだわ。詳細を知らない分野だし、実は原稿制作に困っているの」
アケビがすんなり弱音を吐く。
それ程までに難題なのだろう。
「……お久し振りです、ライリー嬢」
背後から声が掛かった。
「ミラさん!? アルデ嬢も! お久し振りです。これから
隣のテーブルに、魔法研究クラブのミラ(紫)とアルデ(青)がトレーを置く。キノコヘアーは本日も艶々だ。
「はいっ! ライリー様の在籍で、会員が3名も増えました。ありがとうございます!」
「ごめんなさいね、活動に参加をする時間が取れなくて……」
「『名前だけ欲しい』と言ったのは私達です。どうかお気になさらずに……ところで今『魔法』と聞こえましたが、何かあったのですか?」
「はい、友人のアケビがスピーチ大会の原稿に悩んでおりまして……その主題が『戦争と魔法』なのです」
「ああ……それは『引っかけの年』ですね」
「『引っかけの年』? どういう意味ですか!?」
アケビが身を乗り出す。
「数年から数十年に1度、そのテーマが出題されるのです。魔法を信じる有能な人材を炙り出す、言わば
「炙り出して、どうするのです?」
何となく予想はつくが、一応聞いてみる。
「社会的に抹殺します」
「酷い……」
「……」
アルデ(青)の答えにアケビはショックを受けている様子だが、最初の前世で社会を知り、そんな理不尽はとっくに
どの国、どの世界でも多かれ少なかれ裏の顔がある。この異世界もまた、例外ではなかっただけの事だ。
咳払いを1つしてから、ミラ(紫)が忠告をする。
「ですので、原稿には必ず『嘘』を書いてください。アケビさんでしたっけ? 昼食後で宜しければ活動室にて、我々まほ研が原稿のお手伝いをしましょうか?」
「はっ、はいっ! 是非、宜しくお願い致します!」
強力な助っ人に、喜ぶ才女。
「こちらこそ。後輩会員達にとっても、良い勉強となるでしょう……ライリー様はどうされます? ラヴ(緑)やフランソワ(黄)も後で合流しますよ?」
「せっかくのお誘いですが、私は先に帰ります。ごめんなさい、アケビ……クガイに稽古を頼んでいるのよ」
「クガイさん? 彼なら今頃、王城じゃないかしら? 私の護衛隊長も呼び出されたらしいわ……」
「えっ、また!? 最近多くない?」
(まあ王族への
どうせならクガイに『犯人捜し』を頼みたかったが、王城では仕事(会議)に忙しく、そんな余裕は無いらしい。
「おそらく、スピーチ大会の警護計画を立てているのだと思うわ。
「なるほど……」
(クガイに私の護衛までは頼れないわね……でも、ブレイムを守ってくれるのなら、それはそれで安心だわ)
『そうと知れば、私はもっともっと
いつの間にかキュラス伯爵令嬢は『愛』よりも『力』を求めていた――。
肉食令嬢は奇をもたらす~王子獲得と白濁の正義~ まきお @makikichan
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