異世界落ちした天才はひまわりに返り咲いてしまった

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

天才はひまわりへと転じる

 16歳でアメリカ有名大学を飛び級で卒業。その後会社を設立。その偉業を成した僕、学郷寺がくごうじ正剛まさよしは正に天才だ。

 「ようこそ異世界の方、貴方を歓迎します」

 そんな僕に頭にひまわりの飾りを付けた同年代の女が手を差し伸べていた。

 先程まで居たのは社長室。定時退社をしようと扉を開けたらそこには何もなく、落ちると思ったら小麦畑の中に座り込んでいた。

 「ここは、どこですか?」

 「ここは異世界のデアリという国です。さぁ服をどうぞ」

 女の名前はニナ。平凡な少女だと言っていた。

 話を聞く限り、最近流行はやりの創作の異世界転移というものを僕はしたらしい。

 チートや女神との出会いは無いが大丈夫。僕は天才だ。

 知識チートで子どもが異世界で無双する作品があるが、自動車も作れない知識レベルのあいつ等と僕は違う。

 僕は天才、真の知識チートというものを見せてやる。

 異世界へ逃げ、チート他力に縋る連中と、僕は違う。

 「あぁ、僕はこの服で結構。まぁ少し汚れたが問題ない」

 畑の土を払い、ニナを見る。見てろ、現代服を異世界に広めてやる。

 「ふふ、強がらなくていいですよ。そんなボロ・・を着せたままではいけません」

 「は?」


 この国はデアリ。魔法の国だ。そして、その技術力は現代日本を凌駕する。

 「この頭の導きの花が魔導樹と接続していて、都市インフラ管理から天気予報、人の身体・魔法・計算能力まで強化してくれます。異世界には、無いんですか?」

 拳を握る。言い返せない。ニナと計算、身体能力で勝負した。結果僕は大敗。この上彼女は魔法も使える。そして僕は異世界人だからという理由で導きの花の恩恵が受けられない。

 異世界で僕は誰よりも無能になった。絶望した。


 違う、そんな事で絶望する必要はなかった。

 ニナとその家族は優しく、行く当てのない僕に宿を提供してくれた。

 周りの人間は導きの花の恩恵を受けられない僕を蔑む事はなく、互いに助け合いだと接してくれた。

 僕は自分の傲慢さを恥じ、ここに居る人達の力になりたいと思った。






 ある日、魔導樹の力が尽きて導きの花が枯れた。皆の顔が曇った。

 今こそ、天才だった僕の力を使って皆に報いる時だと思った。

 それは間違いだった。

 異世界の人々が僕を魔導樹へと連れていき、僕を樹に捧げた・・・

 魔導樹は刺激を求める植物。異世界という未知の刺激は良い肥料・・になるらしい。

 樹から枝が伸びて僕を飲み込んでいく。叫ぶ中で、彼らは嗤っていた。



 異世界で僕は樹になってひまわりを咲かせる。もう絶望はしない出来ない

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