あとがき

この度は『世界最後のトラベラー』『至灰期~史上最悪の大災害の調査~』をお読みいただき、ありがとうございます!


あとがきでは「設定」や「諸都合あって本編に入れなかった描写」などを紹介していきたいと思っています。質問や疑問点などを見かけたら、付け足していくつもりです。


〇灰の怪

『世界最後のトラベラー』では「滅びの原因」という名前で出てきました。

近況ノートにも書きましたが、成立理由・歪んだ原因・やったこと全てで”The悪役”を目指しています。

発明者はフラクロウの科学者たちで、以前の名前は『宝石科学』。

元は「あらゆる物に価値を定め、より希少な物を価値に応じた宝石に変える」技術でした。この機械は、他の種族や精霊から技術・土地を奪い、古代の技術を伝えている一族を脅し、時には代表者を殺めて技術を奪い取って造られました。

使者ファローと、『黄薔薇の姫君』に登場するセルーナが裏切った技術者集団(イヌダシオン)もその一つです。そうやって集めた『まじない』や『技術』や『遺物』で彼らの技術は完成しました。

※イメージ的には、ピラミッドを重機で壊す+周辺地域の人々は脅して従わせる…みたいな感じです。

精霊や精霊と仲の良かった人々は、勇士や『宝石科学』に抵抗していました。が、ほとんどの生物は『異常はすべて精霊マモノたちの企み」だと考えたフラクロウによって次々に討伐されていきました。

まとめ役をしていた魔王と呼ばれた『大地の精霊』を倒してから、フラクロウや勇士は「何も改善しない。なにかおかしい」と気がつきました。

既に『宝石科学』は科学者の意思や感情を組み込まれて壊れており、『美しい物』を宝石に変えることができなくなっていました

科学者の意思に従い、風を取り込み、道行く先々を灰に変える大災害はいつしか『灰の怪』と呼ばれるようになっていました。

科学者/宝石科学は、『リリア』と勇士とファロー氏が意図せずタッグを組んだことで打倒されました。しかし既に生物でも機械でも精霊でもなくなっていた『灰の怪』は消滅せず、長い間『世界を宝石に変える』ために存在し続けることになりました。

仮にリリアたち勝たなければ、惑星から宇宙にまで『灰の怪』が広がって、世界は完全に滅んでいました。

『世界最後のトラベラー』で星の浮島が『渡航禁止』だった理由の一つと、ファロー氏が帰らない覚悟で至灰期へ向かったのは、『灰の怪』を完全に無力化させる方法がかなり特殊だからです。


○科学者

フラクロウは、カラスやボアがモデルの知的生命体です。

『宝石科学』を暴走させた科学者も、無類の光物好きでした。彼の一番の望みは『世界で一番美しい宝石』を手に入れることでした。フラクロウに出回る宝石も一級品ばかりだったのですが”特別”が欲しくなったのです。

科学者は立場を利用して『宝石科学』を不正に使いました。

科学者は裕福な家に生まれ、何一つ不自由のない環境で育ち、望んだ勉強に励み、社会的地位の高い仕事を手に入れました。伴侶や子どももいたかもしれません。恵まれていたけれど『世界で一番美しい宝石』が欲しかったのです。

科学者は色々なものを『宝石』に変えました。危険を察知した『疾風の精霊』が町一帯を封印して対処しようとしましたが、フラクロウ側は精霊を『悪』と見なして、討伐隊を組み、精霊を打ち倒します。

この時の立役者が『フラクロウの勇士』です。

晴れて石化の解かれた町で、科学者は最後の一歩を踏み外しました。弱って路地裏で倒れている、同族の子どもを見つけたのです。科学者は、同族の子どもを『命も記憶も感情も、生きてきて得た美しい物全て』を宝石科学にくべることで『世界で最も美しい特別な宝石』を手に入れました。そして、精霊の遺体と残った力をも宝石科学に飲みこませることで『宝石科学』の範囲を飛躍的に広げました。

『世界のすべて』を宝石にし、自分自身の思考や感情を『宝石科学』の機械に埋め込み、誰も手に入れることのできない素晴らしい宝石を独り占めしようと考えたのです。


〇リリア

美術鑑賞用の人形族として生まれました。しかし『目の位置が左右対称からわずかに外れていた』ために外見規格外と判断され「失敗作」と言われました。

決まりに従って廃棄されるはずでしたが、サディストのフラクロウ貴族に買われ、ひどい扱いを受け、タタリ人形と化しました。ある空域を汚染し尽くした所で虫系の知的生命体が『疾風の精霊』に願い、リリアは『疾風の精霊』に引き取られました。

以来『疾風の精霊』によって浄化されつつ、精霊の神官・巫女であるまじない師の老夫婦に生活の面倒を見てもらっていました。

やがて世界への憎しみに折り合いをつけ、普通の人形族として老夫婦の跡を継ぐことをリリアは考え始め『疾風の精霊』の友人となります。しかし完全に浄化が済む前に町は石化し、『疾風の精霊』は勇士によって討伐された後でした。

リリアは『精霊が町を石化したことには、必ず原因がある』と考え、精霊との会話から糸口をつかみ、科学者の計画を知りました。

彼女は精霊が与えてくれた美しい心・自分の持ちえる美しい記憶・鑑賞用の人形族としては規格外でも、一般的には十分美しい見目のすべてを捨てる代わりに、自分を戦闘用の人形に改造して『宝石科学』の本体と戦いました。


○星の浮島の成立

精霊や信託・まじない師などの忠告に耳を貸した生き物は皆『黄薔薇の城』に逃げ込んでいました。

最後まで彼らを疑っていたけれど異変に怯えていた人々は、精霊たちの国があった森ヴィダの森をずっと守っていた門番『キャメル』に反省したことを伝えて助けを求めました。

キャメルは生き物たちを憎んでいましたが、恩人や戦友だった精霊や協力者の願いを遂げるために生き物たちの願いを聞き届けます。彼はリリアと勇士が『灰の怪』と戦っている間に、かつて育て親や精霊に教わった曲で、ヴィダの森を結界に守られた安全地帯に作り変えました。

この際、「キャメル」は7つの約束を生物たちと交わしました。

精霊が作った結界で、滅びから守られた『星の浮島』と『黄薔薇城の周辺』。これだけを残して、惑星は灰の星に変わりました。


○キャラクターについて

話の途中ちょっとだけ出てきた「キャメル」「フローセ」「アクティ」「ルウルゥ」「教師」たちは全員、『灰の怪』が発生した世界から、逃げてきた人たちです。

「ルウルゥ」さんだけは生まれも育ちも大図書館です。昔、フラクロウに滅ぼされた精霊の里に留学していました。

「華仲ロマン」は大図書館の職員です。正規ルートで就職しましたが、ファロー氏同様出身地に負い目があったので、ファロー氏とは友人ではないものの「気負わず話せる数少ない相手」でした。それもあって、ファロー氏にレポートの代筆を頼まれました。


○あの世界の歴史

ハピーメロウ文明・世界(大体みんな幸せ・楽園時代)→滅亡して文明が消える

→フラクロウの時代(ハピーメロウは『実在したと思われる巨大な文明。遺物がすごい力を持っている』扱い)→『灰の怪』による滅亡

→星の浮島発生

の順番です。

『星の浮島』はトラベルさんが並行世界に迷い込んだ世界(正史)です。

教師さんたちが滅茶苦茶慌ててたのは、自分たちが一番『灰の怪』の恐ろしさを知っていて、あの世界の怖さも知っていたからです。


○イヌダシオンの集落

イメージ的には屋久島のような、自然豊かな土地でした。

フラクロウが征服した際、「大量伐採からのフラクロウ式住居の建築」や「内部分裂を誘発するための大量移住」によって森が削れ、地表がフラクロウの排泄物(毒物も平気で食べる民族なので、排泄物も強い毒性を持つ場合がある)に覆われた結果、徐々に土地がやせていきました。

トドメになったのは『宝石科学』です。「不毛の地に息づく生命」を「希少で美しいもの」と認定して、大粒のダイヤモンドに変えました。


○二重線で消された日付のメモ

一つ目は宝石科学についてのファローさんの独自解釈メモです。

彼は『宝石科学』の設計図を撮影した時に、道具としての勘で

『宝石科学は醜いと判定したものを宝石にはできないのではないか』

『宝石科学で宝石に変えたものは元の物質には戻せないのではないか』

と仮説を立てていました。

同時に「役に立てるかもしれない」と考え始めてもいました。


二つ目は「自分の知っている限りの精霊種やその協力者の末路」です。

「海峡」はかつてイヌダシオンを守ろうとして、フラクロウ最盛期より前に消滅した精霊です。ファローが恩を仇で返した相手でした。

「疾風」は本編でも登場した、真っ先に『灰の怪』の犠牲になった精霊です。

「晴天」はファローと共に、イヌダシオンを裏切った元精霊でした。

「水」「泡」「蝶」「鏡」は、かつてイヌダシオンに属し、魂ごと消えることを覚悟してあの世界を守るために残っていたファローの元同僚です。

「灯」「夜」「根」「音」「図書」「土地管理精霊種」「山」「大地」はあの世界に残っていた精霊種たちでした。

全員、フラクロウの勇士によって討伐され死亡したり、物族の場合は修復不可能なほどに破壊されました。


○フラクロウの勇士に与えられた「伝わっていない」ことについて

『フラクロウの勇士』は間接的に世界滅亡の引き金を引いたため「大図書館≒アカシックレコードへの記録拒否」を受けました。

つまり「最初からいなかったことと同じこと」になります。

勇士の性別・年齢・容姿・名前・人数は「許されていない」からどこにも記されず、ただ「フラクロウの勇士」とだけ呼ばれます。


○設計図・作戦・身体組成が分かるとどうなる?

大図書館の技術や各世界から集められた知識によって、フィクションになった世界に残る『灰の怪』への対策を立てることができます。

『特殊な方法』に頼るしかなかった理由の一つには、『宝石科学が機械である』以外の情報がなく、対策が建てられなかったこともあるためです。


○補足

補足1

ファロー氏曰くの「不毛の大地」はガチの不毛です。雑草一本生えていない赤茶けた岩場の上空に、どんより曇った鈍色の空だけ続く空間と化していました。


補足2

スクラップ、タタリ人形、は大体同じ意味です。

イメージ元は「メリーさん」。

造られたその日に、製造者から「失敗作だからいらない」と言われて捨てられたり、失敗作なりに生きようとして酷い目にあった人形族のことを指します。

そこにあるだけで世界を*うのでタタリ人形と呼び、大抵の場合、管理精霊種以上の『力の強い精霊』に預けられます。精霊の元で数百年過ごせば普通の人形族になれます。

フローセ氏も、半分タタリ人形でしたが、製造者に「任務を何としてでも果たせ」と言われたので、完全なタタリ人形にはなりませんでしたがファロー氏とは緩い仲間意識がありました。


補足3

ファロー氏が向かった先は「正史の至灰期」でした。

正史なので云万年経てば『特殊な方法で灰の怪が浄化される』世界です。

その間『黄薔薇城』が無事であることは知っていたので、事前に「成功しても失敗しても『灰の怪』が消滅した後に正規の大図書館員が黄薔薇城に向かう」手はずになっていました。


大図書館の職員側としては「帰ってくる場所になりたい」「無事に戻ってきてほしい」「あなたの口から直接報告を聞きたい」のつもりで伝えた案でしたが、ファロー氏は『自分が役に立つことを証明すること』が至上命題だったため、仮設の伝言をアクティ氏に任せて『灰の怪』への直接勝負に行きました。

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世界最後のトラベラー・至灰期(補足) 一華凛≒フェヌグリーク @suzumegi

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