第53話 「一体、どういうことなのか説明して頂けますか?(満面の笑み)
「光太郎。お姉ちゃん聞いてるんだけど、この2つの靴はなに? 見たことないんだけど」
俺の激しく絶望へと刈られ完全停止してしまった脳に遠くから、またそんな声が聞こえて来る。これが幻聴だったらどれだけ良かったか。
というか夢であれっ。幻聴であれっ!
「せ、先輩? そんな震えてどうしたんですか?」
「そうよ、普通に答えればいいじゃない」
俺が現実逃避を始めていると2人はそんなことを言って来るが、本当にあの人が怒ったところを見たことがないから言えることだ。
いや、市川さんはそもそも会ったことがあるのか知らないけど。
確かに姉バージョンの時の静姉は怖い……でも、妹バージョンの時はキレる時が滅多にない分怒るととんでもないことになる。俺はそれを過去二度味わい知っている。
「もう、なにも答えないならお姉ちゃんそっち行くからね〜」
そして、この声が先程から段々と怒りへと変化して言っていることも知っている。
もう、誤魔化しようがない。というか、静姉が家に帰ってきた時点で既に詰んでいたのだ。
「あっ、そういうことですかぁ。新井ちゃんにそれともうお一方……こんにちわです」
「お、お久しぶりです」
「お、お邪魔させて貰ってます」
そしてさっきかなり遠くで聞こえたはずなのに、気がつけば静姉は真横まで迫っていた。
……なんだろう、ホラーゲームでもしてるかのような気分だ。
これには新井も市川さんも驚いたようで2人とも声を少しうわずらせていた。
そして俺はと言えば……、
「それでこれはどういう状況なんですか?」
「いや、あの……」
静姉に怖すぎるほど満面の笑みで見つめられ、ヘビに睨まれたカエルの如く萎縮し動くことさえ出来ずにいた。
これが
「女の子2人連れ込んで……なにか言い訳はあるんですか?」
「いや、あの俺が提案したわけじゃなくてですね、2人が言うから仕方なく……」
俺は焦りに焦って何故か敬語でそんなことをまくし立てるが、目の前に立つ静姉は変わらず満面の笑みを浮かべたままだ。あっ、これ死んだぞ?
「「おっ、お邪魔しました〜」」
そして新井も市川さんもグロシーンは御免だと言わんばかりに、先程までの態度はどこへやら足早に去ろうとする。
「ちょっとだけ待ってくれるかな? 2人にも光太郎のこと聞かせて欲しいし」
「「……分かりました」」
しかし、静姉にそう呼び止められ死刑宣告でも受けたかのよう顔を青くする両名。いや、
実際に死刑宣告受けてるのは俺なんだけど。
「じゃあまずは」
「待って話を聞いてくれ。しょうがなかった、しょうがなかったんだ。2人を納得させるにはこれしか方法がなかっ___」
「分かった……一回、光太郎の全身を血に染めてから話を聞くから」
「それ聞けないっ。もう、二度と聞けないからっ。やめっ___あぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」
K氏の体験談:最期に視界に映った新井と市ノ瀬さんが耳を塞ぎこんで目を閉じている所が印象的な時間でした。
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次回「白菊の花と少女3」
完全にこの数日沼ってました。なんとか抜け出せました。書いては消しの繰り返しは中々に辛いものです。迷惑ばっかりかけてすいません。
では!
新入生の可愛い後輩が告白を断る際に俺と結婚の約束をしているからと言っているらしい……やめてくれ。 タカ 536号機 @KATAIESUOKUOK
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