夜に想う
香坂 壱霧
── Dear my dog ──
隣で寝息をたてている君は、夢のなかにいるようだった。眠っている君を起こさないように、少しだけ近づいて君の様子を眺めるこの時間は、なくてはならないものだった。
目尻は下がったように見える。そして口角を少し上げ、穏やかな微笑みを浮かべながら、寝そべっている。そんな姿が愛おしくてたまらない。
僕はまだ眠りに就けそうにない。
眠れなくても君の寝息のおかげで、穏やかにいられるのが救いだ。君にこんな姿を見せなくて済むのだから、君の眠りは深いのが良い。
「どんな夢を見ているんだろう」
頬が緩む。幸せだと思う。なのになぜ、眠れないんだろう。君がいるおかげで、寝付けなくて不安にならない。
僕は君なしでは生きていけそうにない。僕がいなかったら、君も生きていけないのかもしれないけど。
君は、僕じゃなくても大事にしてくれる誰かがいれば、たぶん生きていける……かもしれない。でも、アトピーが悪化したり、食欲がなくなったりするのではといろいろ考えてしまって、僕は君から離れられなくなる。
僕は、君がいない日々を想像したくない。だからだろうか。いつか来るその日を思って、僕は眠れないのだろうか。それなら僕は幸せだ。
今はこうして君の寝顔を見ていられるし、君が目を覚ました時に僕がいるその瞬間の表情を見逃さないのだから。
僕は君に依存し過ぎているだろう。お互いになくてはならない存在であるなら、重ための愛を与えあおう。
君が生きている限り、幸せは続く。どんな夜であっても。
〈了〉
夜に想う 香坂 壱霧 @kohsaka_ichimu
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