10話
寒いな、本当なら寝ている時間に何故か外にいた。
横には楓ちゃん、いま向かっている場所にはあの二人もいる。
歩くことが好きな私とはいっても年内最後の日ぐらいはお家でゆっくりという考えしかなかったというのにこれだ。
「わざわざ別行動をしてまで連れて行くような人間じゃないでしょ」
「たまにはいいでしょ」
「たまにどころか一日しかないけどこういうのは楽しみたい人だけが出るべきなんじゃないのかな」
「屁理屈はいいから」
屁理屈と片づけられてしまったらどうしようもなくなる、そういうのもあって手を掴むことで無理やり止めた。
どうやら彼女には力で勝てるみたいだ、別にこれで自分が有利になるように動こうとは考えていないけど一対一なら案外なんとかなるかもしれない。
「二人きりなら行くよ」
「それは無理、だってすぐに連れて戻るって言っちゃっているから」
「お願い」
でも、お願いしただけでなんとかなるならこうなってはいないということで、結局数分もしない内に四人となる……はずだったんだけど、
「あれ、二人がいないね」
彼女にとっても想定外のことのようで不安そうな顔になっていた。
私としてもこういう形で二人きりになれても嬉しくはないから聞いてみると保香からここには来ていないということを教えてもらった。
なんかおかしくてじっと見てみると「い、いないなら仕方がないね」などと言って歩いて行こうとする。
「もしかして私といたくてそういうことにしたの?」
「な、なにが? 急に用事ができてここから離れることになっただけでしょ」
「ふふ、そうなんだ」
「……ま、別に二人でもいいでしょ」
よしよし、これで責められることはなくなった。
あれだ、お友達といるときは強気な態度でいられても一人になると静かになるあの現象と似ている、それは彼女もそうなんだ。
だから手を握ったりしても途端になにも言ってこなくなるため許可も貰わずにぎゅっと握った。
「違う場所によく行くよね」
「私は小学生のとき、聡子と他県の神社に行ったよ」
「他県のっ? なにがそこまであなた達を動かすの……」
「学生なら普通でしょ、保香だって聡子と中学のときに行っていたからね?」
「やっぱり私の妹じゃないのかも……」
髪質とかに差はないけど人間性という点でかなりの差がある、すぐにお友達ができるというところでも分かりやすく違う。
「安心しなよ、あんただってちゃんと似ているところがあるから」
「どこ?」
「髪とか笑顔とかかな」
「えぇ、それってないようなものでしょ……」
「ははっ、大丈夫だから安心しなよ」
その二つが似ているなら大丈夫! とはならないだろう……。
じっと見ていると「彼女がいるんだからいいでしょ」と無表情で言ってきたからよくそんなことが言えるねと返したら、
「うるさい」
「はは、ごめん」
ということだったので謝っておいたのだった。
139作品目 Nora @rianora_
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