第4話 犬を飼う

「犬バア生きてるか?」


メイルが村長とまだ話している横で俺は犬バアに話しかけた。


「おぉ?今日はいい天気じゃのぉ。お主は新人ギルドマスターのサトシじゃったか?」


ボケボケだな婆さん。


「教官だ。ところで犬が欲しいんだが」


「どの子がええ?」


犬の話はちゃんと聞いているらしい事に安心する。

リストを見せてきたので眺めてみる


「ほうほう、」


リストを見ていると


「獣人とかもいるんだな。犬耳かぁ」


原作には犬耳の獣人なんて要素なかった気がするが。

俺的にはエロければ、それでオッケーです!


「じゃ、この子、この子が欲しい!」


「そうかえ」


「値段は?」


「はて?いくらじゃったかのう」


「大丈夫かよバアさん」


「思い出したわ。350億2000万ジュエルじゃ」


「高すぎねぇかよ?!」


リストを見る。

値段くらい書いてあんだろうと、20万ジュエルだと書いてある。


それを指摘すると


「はて、そうじゃったかのう?とにかく350億じゃ」


こいつ、足元見やがって……

アコギな商売しやがんな。


「とりあえず連絡してやるわ」


そう言って婆さんは魔法でどこかへ連絡し始めた。


「おぉ、この子じゃが買い手が付きそうじゃ、在庫は?」


話し始めた犬バアの顔が急に曇った。


「な、なんじゃて?!雪山で犬を乗せた馬車がモンスターに襲われておる、じゃて?!」


話を聞くに商品が届かない、ようだが。


「そ、そんなワシの350億が……」


その場で四つん這いになるくらい絶望している犬バア。


俺のことなんて見ちゃいない。

俺はとりあえず雪山に移動することにした。



「さてと、始めますか」


魔法を使う。

千里眼。


「見えた。雪山の上の方だな、これ」


それを確認すると俺は雪山を登っていく。

はぁ、だりぃ。


雪山の頂上に辿り着くととりあえず様子を見る。


「ほう、あれか。ボアが馬車を襲っている、ということか」


何故か分からんけど30匹くらいのボアが雪山の頂上で馬車を襲っていた。


「く、来るな!来るなぁァァァァ!!!!」


馬車に乗っていた男が剣を振り回しているが


「あぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」


っと崖から転がり落ちていってしまった。

可哀想に、今から行っても間に合わないしな。


「よっと」


俺は少し上の高台から様子を見ていたが飛び降りて、全てのボアを処分する。


「ふむ。こんなものか」


呟きながら馬車に近寄ってナイフで荷台の鍵を壊して中を確認すると。


「おぉ、いるね」


俺が犬バアに欲しいと言った犬耳の少女が中にはいた。

寒さによるものか気を失っているような感じもするが、そんな少女を抱えて俺はとりあえず横穴に入ることにした。


「はぁ……寒……」


俺は装備を脱いで少女に着させる。

雪山に長時間晒されたせいか、危険な状態にある気もするが。


「ファイア」


俺は魔法を使って焚き火を起こした。


前にここで焚き火をした人がいたのだろうか。

焚き火の準備が出来ていた。


ぱちぱちと音を鳴らす焚き火の音を暫く聞いていると


「ん?」


犬耳の少女が目を開けた。


「ここは?」


「やぁ」


俺は少女に目を向けた。


「あ、あれ?私馬車にいたんじゃ?」


「モンスターに襲われてたから助けたよ」


「そ、そうなのですか?」


聞いてくる少女に頷いた。


「奴隷、だよね?名前は?」


「は、はい。名前はありません」


そう口にする彼女に俺は名前を付けることにした。


「ティアとかどう?」


「は、はい。いいお名前ですね」


そんな彼女に俺は言う。


「とにかく動けそうでよかったよ。とりあえず下山しよう。ここは寒いから」


俺が横穴を抜けると、


「きゃ、きゃー!!!!」


ミーナの叫び声が聞こえた。


「ここに来てるのか?一体どうしたんだろう」


俺はティアにすぐ戻ると伝えて横穴で待っているように指示を出した。


この横穴はゲームでも安全な場所だったので、モンスターに襲われる心配は無い。


「ひぃぃぃぃ!!!!だ、誰か助けてくださいぃぃぃぃ!!!!」


俺が声の聞こえた方に辿り着くとメイルがトカゲ型のモンスターであるレックスに追われていた。

溜め息を吐いて俺はレックスに矢を放つ。


断末魔を上げて倒れるレックス。

それからミーナに近付いた。


「大丈夫か?」


「ひ、ひぃぃい!!!怖かったです!!」


俺に飛びついてワンワンと泣き出してきた。

そんなミーナを引き剥がして訊ねる。


「なんの依頼を受けたの?」


「ぐすん。この【迫り来る気配】っていうクエストを受けました」


半泣きになりながら報告してくる。


あー、このクエスト。

レックスと強制エンカウントするクエストじゃないか。


「ボアノタン3つの納品が目標のクエストだよね?」


と確認を摂る。


「ぐすん。はい」


「こっちおいで」


俺はさっきのエリアにミーナを連れて戻ると


「ぼ、ボアが沢山倒れてます!す、すごいです!」


「好きなだけ剥ぎ取りなよ。これだけあればボアノタンで困ることないでしょ?」


「わ、私のために狩って下さったんですか?」


「ち、違うよ?」


そう行ってみたけど


「ありがとうございます!大好きです!」


と飛びついてくる。


「まぁ、何でもいいけどとりあえず剥ぎ取っておいで、このクエスト制限時間短いでしょ?」


「は、はい!そうでした!」


沢山のボアの所に向かうミーナを見送ってから俺はティアを回収してそのまま帰ることにした。


訓練所兼自宅に帰るとティアには色々やらせる事にした。


犬耳をピクピクさせながら色々と言うことを聞いてくれる。


「ご主人様。こうでいいのですか?」


とりあえず料理の仕方から仕込むことにした。


「うん、それでいいよ」


次に炊事洗濯、俺がやりたくない面倒なことは全部任せる。


そうして俺はティアが一通り終わるまでソファに寝転んで寝ることにした。


今日も訓練所を訪れた人間は0。


まぁ、それもそうか。こんな辺境の田舎にいる冒険者なんてそもそもミーナくらいなんだからそのミーナが来なかったら誰も来ないわけだし。


「まぁ、この生活も悪くないかもな」


そう言えば前世で見たことあるなこういうの。

田舎に住んでスローライフを送る、みたいな話。


「これで給料出るなら悪くないかもな」


なんて事を思って勤務時間にゴロゴロする。


「悪くないどころか最高だなこれは」


よく考えてみたら俺は最強の環境に来ていた。

暇という事は裏を返せば自由時間が沢山あるという事だ。


「そういえばこの村。農場があったよな」


そう思った俺は明日は勤務時間に農場まで行くことに決める。

なんか育ててみよ。


これが不労所得という奴なのだ。


最高だな異世界は。

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狩りゲー世界に転生して訓練場の教官をしているのはいいが、愛弟子が俺を溺愛していて巣立ってくれない件 にこん @nicon

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