第6話
参考人の
いわゆる"元カノ"と"元カレ"というヤツ。
「まさか、アナタが彼女をっ!」
元カノたる女性は、先ほどまでの
元カレたる青年は、ブンブンと首を横にふり、
「ふざけるな! 僕は、たまたま近くを通りかかっただけだ。このアーケード街に足を踏み入れたのだって、今が初めてなのに」
「たまたま通りがかるなんて、ありえない。アナタの職場もマンションも、ここからずっと離れてるじゃないのよ。彼女を見張って、ここまでコソコソ後をつけてきたのに決まってるわ。この大ウソつき!」
「ウソつきは、そっちだ!
「そういう疑い深いところにウンザリしたのよ!」
「僕に内緒でコソコソ、しょっちゅう深夜に外出してたじゃないか。浮気じゃないなら、なんだったんだ?」
「そんなの今さら、アナタに説明する義理なんかないわ」
「なんだと? この
「そっちこそ、ヒトゴロシ!」
黄色い規制テープのすぐ外側で、今にもツカミかかって
どうやら、おとなしげな顔に似合わず、青年は、交際相手に対する
元カノと非常に
「あれ?」
若い刑事は、細長い青年の上体にシガミつくような格好で抑えつけるうち、不意にケゲンな声をあげ、
「なんか、ペンキみたいな匂いが……?」
と、青年のシャツにブシツケに鼻を寄せてクンクン匂いをかいだ。
「失礼じゃないですか! ペンキなんて見てもいませんよ、僕」
青年は、
洗いざらしの白っぽい無地のシャツには、たしかに、小さなシミひとつ見えない。チノパンも、シンプルな白いスニーカーも、オロシタテのようにピカピカだ。
一方、
「被害者のズボンの尻ポケットに、こんな紙きれが入ってました」
「…………?」
警部は、スーツの胸元から白手袋を出してハメてから、四つ折りにされた白い紙を受け取った。
広げると、A4サイズのコピー用紙。カラープリンターで出力されたカラフルなイラストに彩られている。
グラフィック用のPCソフトを利用して描かれた、いわゆる"デジタル画"だ。
横長の画角には、フワフワした小さな
画角の端のほうには、絵の具を散りばめたパレットと絵筆が、今まさに虹の橋を生み出している最中というギミックの、
絵の上部には手描き風の書体で「I LOVE ART」というアルファベットが並び、下部には「○○画材店」という店名が、それぞれ淡いパステルカラーで書きこまれていた。
「これって、
と、
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