第11話 別れ


 ジャックは俺の前に立ち、口を開く。


「ロイド、お前……俺達のチームから追放するわ」

「ジャ……ジャック?」

雷電ジャックロードは俺とケビン、アントンでもう完成されてんだよ。それに、元々お前は補欠だったろ? 別に居ても居なくてもかんけーねぇ」

「……」


 ジャックは無表情でただただそう言って来る。

 でも、ここでその言葉通りの意味で受けることはできない。


「ジャック! 俺はお前と!」

「ロイド!」

「!」


 ジャックに大声でさえぎられ、俺は思わず体をすくませる。


「ロイド。いいか? 何度も言わせるな。俺のチームに、お前は要らない。だから中央でもどこへでもさっさと行け」


 ジャックはそう言って、俺に背を向ける。

 ケビンとアントンも俺に背を向けて、ジャックの後を追いかけた。


 その時に、2人とも口を開く。


「それでは、これでもうあなたの無茶な速度に付き合う必要はなくなります。これからは自分の為に片づけをするのですね」

「おいらは別にロイドが居なくても問題ないんだな。だから安心して好きな場所で好きな様に生きるんだな」

「2人とも……」


 3人はそう言って、部屋から出て行く。


「ロイド。あなたは……どうしたいのですか?」


 俺が呆然としていると、姉が話しかけてくる。


「俺は……俺は……」


 俺はどうしたいのだろうか。

 中央に行きたい?

 ニクスのようになりたい?

 最速最強になりたい?


 ……なりたい。

 俺は……俺は……。


「俺は最速最強になりたい」

「それじゃあ、今一番しなければならないことは?」

「……中央に行って、シルヴィアさんに指導をつけてもらう」

「そうね。なら、何をしなければならないの?」


 俺は体をシルヴィアさんの方に向けて頭を下げる。


「シルヴィアさん。俺を中央に連れて行って下さい。どこまで出来るのか分かりません。ですが、出来ることを全力でやらせて頂きます。なので……お願いします」

「何で頭を下げる必要があるんだい。別にそんなことをする必要はないよ」

「でも……」

「アタシが誘ったんだ。だから……あんたのやることは今は休むこと。わかった?」

「……はい」


 俺はそれから姉に付き添われながら休む。


******


 それから1週間。

 俺は準備を整えて、家族や友人に見守られながら、列車が出るのを待っていた。


「それじゃあ行ってきます!」


 シルヴィアさんにスカウトをされてから1週間。

 本当はすぐにでも中央に行きたかったのだけれど、治療師の人が「1週間は最低でも安静にしていなさい」と外出を許してくれなかったのだ。


「少し外に出るだけならまだしも中央に列車で行く? 怪我をなめているのですか? どれだけ重傷かわかっていますか?」


 と言われてしまったのでシルヴィアさんも素直に従っていた。


「次は負けねぇからな」

「気を付けて行って来いよ」

「あの美人で巨乳のお姉さん俺にも紹介しろよ」


 敵チームであるはずのゲイリーや友人たちは口々にそんな事を言う。

 ……最後の奴は違うか。


「気を付けて行ってらっしゃい」

「まさか世界大会を観にいってこんな風になるとは思わなかったよ」


 両親の説得はどうしようかと考えていたけれど、思いのほかすぐに許してくれた。 

 姉が許可したのなら私たちが言うことはない、だそうだ。


「ちゃんと手紙書いてね?」

「うん。分かってるよ」


 姉にそう言われれば書かない訳にはいかない。


 そうして、俺は中央に向かう列車に乗る。

 自分の部屋に入って席に座り、窓を開けて皆に手を振った。


「じゃーねー! 少しだけ行って来るからー!」

「元気で帰って来るのよー!」

「わかった!」

「約束だからねー!」

「約束する!」


 それから汽笛が鳴り、列車が発車する。

 ゆっくりと動き出す視界の端に、俺のチームメンバーが見えてきた。

 彼ら魔法禁止のエリアを走り、必死に列車についてくる。


「ジャック! ケビン! アントン!」

「おい! 俺も試験の時にそっちに行くからよ! ちゃんと案内しろよな!」

「元気で居て下さいね!」

「お土産は質よりも量がいいんだな!」

「みんな! ありがとう! 元気で!」

「お前こそ、遅くなってたら承知しねぇぞ!」


 ジャックは走り続け、アントン達がこけても走って追いかけ続けてくれた。


「分かってる! 俺は最速最強になるから!」


 ジャックはそれ以上走ることをやめて、ただじっと俺を見ていた。


 俺も、彼の目をじっと……見えなくなるまで見続けた。


「いい仲間じゃないか」


 シルヴィアさんがそう言って部屋の中に入ってきた。


 俺はそれに自信を持って答える。


「はい。ずっと……ずっと一緒のチームとしてやってきた。自慢の仲間です」

「そう……なら、それに相応しくなれるように、頑張って練習しないとね」

「はい!」


 俺達が乗った列車は、中央であるセントリアに向けて進んでいく。


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