脱サラして田舎で農業を始めた20代独身男性の主人公。隣の家に住む可愛い女の子が、頻繁に話しかけてきたり、家に遊び入り浸ったりと、やたらと距離が近い! これは脈があるのか、それともただの男やもめのおっさんの願望なのか、若い女の子に振り回される主人公の懊悩が実に傑作です。
ブラック企業で働くことに嫌気がさして農家に転職したものの、朝から畑仕事で野菜に水をやったり、肥料を盛ったり、雑草を抜いたり、仕事は山積み。ようやく日が沈んで仕事を終えても、地域の消防団の会合やら、飲み会につきあわされたりと、田舎暮らしは楽じゃない。
そんな生活の潤いが、隣の家に住む可愛い女の子が頻繁に手伝いや遊びにくること、無防備な格好で漫画を読んだり、アニメを見たり、おしゃべりして帰っていく、そうして就寝する頃には、「今日もいい一日だったな……」と満足に浸る。
とくに大きな事件や騒動は起きない、淡々と続く農村の日々が描かれるだけだが、そんなささやかな日常の幸せが愛おしいのだ。都会に疲れた人が想像する理想の生活がここにある。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)