第18話

 勇者たちはそれぞれの故郷に戻り、魔王を打倒した功績を讃えられて高い地位と名誉を国からもらうこととなった。そのうち五人はウィンター帝国の勇者、彼らは帝国で愛する者と結婚して家庭を築くこととなった。


 特に、セイブンとタヒナは幼馴染同士で勇者同士。この二人の結婚は仲間の勇者と帝国の国民たちに祝福されることとなった。





ウィンター帝国では、破壊された都市などの復興作業が行われていた。



「グリン軍曹、こっちです〜」


「早くせんか!」


「ブラク二等兵、レド伍長、そんなに慌てなくてもいいじゃないか」


「いや、あの二人の言う通りでありますよ、ブル兵長。平和ボケは禁物であります。……特にイエロウ曹長、お前はもっと働け!」


「俺様は頭脳労働担当だぜ〜」



 かつて戦場で傷つきながらも戦った兵士たちが談笑しながら働いている。戦争が終わり平和になったことで心にゆとりができた証拠だ。



「おや、あれは勇者様では?」


「セイブン殿にタヒナ殿でありますな。向かう先は、病院?」


「どこか悪いです?」


「いや、あれはおそらく……」


「できた、ってことだな」


「「「え?」」」



何かを悟ったとある小隊の五人は、二人の勇者を見えなくなるまで微笑ましく見守った。





「「ただいま~」」


「おかえりなさい、旦那様! 奥様!」


 セイブンとタヒナは貴族並みの屋敷でともに暮らしている。ただ、二人でなく三人だった。帰ってきた二人を一人の女の子が出迎える。


「おう、モアラ。留守番ありがとうな」


「一人にしてごめんね。もっと早く終わるはずだったのに」


「いいえ、とんでもないです。モアラはお二人のおかげで寂しくなんかありません!」


 銀髪で瞳の色は黄土色の小さな女の子が笑顔を向ける。この可愛らしい女の子はモアラ。かつてタヒナが救い出したアンゴール王国の唯一の生き残りだ。セイブンとタヒナが結婚と同時に養子に迎えたのだ。


「それでどうだったのですか? 奥様のお腹にいるのですか、赤ちゃんが?」


「おう! いるぞ! モアラの弟か妹だ! めでたいだろう!」


「新しい家族が私のお腹に……そうするとモアラもお姉さんになるのね」


「!」


 今日、セイブンとタヒナは仕事帰りに病院で検査を受けていたのだ。タヒナが妊娠していないか確認するために。その結果は二人の喜ばしいものだった。もちろん、モアラにとってもそうだった。


「私に……家族が増えるのですね!」


「ははは、そういうことだな! そういうことでタヒナはしばらく仕事はお休み。モアラとお腹の子供と三人で屋敷にいるってわけだ」


「わーい! 嬉しいです!」


 無邪気にはしゃぐモアラの姿、彼女を眺めるセイブンとタヒナの目は自愛に満ちていた。


「一度全てを失ったあの子があんなにはしゃぐなんて……やっぱり、家族に対するこだわりは人一倍強いな」


「ええ、最初は中々心を開いてくれなかったけど、今は私達の養子にまでなってくれた……。あの子やお腹の子供のためにも私達はこれからも戦っていかなきゃいけないわね」


「ああ」


 戦争が終わって平和になっても、勇者が背負うべき問題はまだ数多い。おそらく、屋敷で家族が揃うこともこれから少ないだろう。


「俺達の戦いは終わったわけじゃない。勇者である限りまだ続くんだ。これからを生きる子供達のためにもな……」


 セイブンは人類が勝ち取った未来に思いを馳せる。




終わり

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七人の勇者が世界を変えるまでの長い道のり 〜勇者が魔王を倒して人魔大戦を終わらせて平和をもたらす物語〜 mimiaizu @mimiaizu

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