第7話
私たち姉妹が入れられた修道院の起床時間は早い。
夜が明ける前に起きて黙祷し聖書を読み、
ミサに朝の祈りを終えてから朝ごはんなのだけど、出されるものは固いパンとお水だけ。
初めて出されたとき、妹と私はすごくショックを受けた。
「えっ、これだけ?」「こんなんじゃお昼までもたないわ」
文句を言うと厳しい先輩シスターに睨まれてしまい、縮みあがっちゃったわ。
おうちにいたとき毎朝食べていた焼きたてホカホカのマフィンがなつかしかった。
——あのマフィンはシンデレラが毎朝焼いてくれてたのよね…——
朝ごはんを食べ終えた後は再びお祈りの時間で、その後で掃除やら洗濯に時には当番制で夕食の支度をしなければならないのだけど、それら全て今までシンデレラにやらせていたことだった。
——なんで私たちがこんなことしなきゃなんないのよ!!——
はじめのうちはシンデレラのことを思い出すとムカムカしてきて、妹と一緒にそこら中に八つ当たりしまくっていた。
荒れたりするたびに独房のような部屋に入れられて反省文を書かされたり・説教されたり、
それはもう大変だったの。
とにかく修道院での生活は一日中祈りやら懺悔やらでちっとも楽しくはなく、発狂しそうだった。
妹と私は他のシスターたちから離れ、特別な時間が毎日あった。
そう、それはこれまで私たちがシンデレラに対ししてきたことに対する懺悔。
はじめのうちは、「私たちちっとも悪くなんかないわ!」「シンデレラのせいで不幸になった!」そうわめき散らしていたのだけど、修道院の生活に慣れていくにつれ、自分たちがいかに非道なことをしてきたのかがわかってきたのよね。
いいえ、本当は心の底では気づいていたのかもしれないわ、あんなこと言われたり命じられたりしたら耐えられないと…。
なんであんなに意地悪してしまったのかしら?
お父さまがまだ生きていたころは仲良くしていたのに…。
院長先生に言われたのは、「あなたのお母さまが意地悪をしたから、そういう接しかたしか知らなかったのではないのかしら?」という言葉だった。
確かに子供のころって母親が絶対的存在だから逆らえないし、子は親の背中を見るものだけど…。
自分たちの意地悪っぷりを知れば知るほど苦しくなってきたのよね。
ちょっと厳しい副院長先生には言われてしまったわ、「シンデレラは少なくとも10年は悲しみ苦しんできたのだから、それに比べたらあなたたちはまだまだよ」と。
ゾッとしたわ、こんな苦しみずっと味わんなきゃならないの!?って…。
逆の立場に立って想像することも求められたりもした、「もしもあなた方のお母さまが早くに亡くなり、新しい家族に形見の品を次々と奪われたり売り払われたりしたらどう思いますか?」とか、「もとは自分が生まれ育った家でお嬢さまとして育ったのに、ある日突然使用人と同じ扱いをされたらどう思いますか?」などなど…。
それに加えて数々の暴言を指摘され、ああ今までどうしてあんなひどいことができたのかしら!
シンデレラの過呼吸にPTSDは徐々に治ってはいるって話だけれど、私たち親子が傷つけた心は一生消えることはないかもしれないとも言われたわ。
あなた方は罪深いことをしてきたのだからと、人一倍懺悔をしなければならなかったり…。
このたびはめでたくもシンデレラが第一子を出産し国中が祝福にあふれているけれど、私たちにできることは遠くから彼女の幸せを祈ることだけ。
私たちは一生十字架を背負って生きなければならないのかもしれない…。
〜完〜
シンデレラの姉 帆高亜希 @Azul-spring
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