第6話 【リーナ視点】原作のストーリーどこなんですの?

side アンジェリーナ


訳が分からない。


この世界は


【仮面を被った悪役令嬢の私、なにも知らない愚か者のバカ貴族に婚約破棄される。でもバカ貴族にざまぁをくらわせて私は隣国で山ほどのイケメンに溺愛されて幸せになります】


というタイトルのゲームの世界。


のはずだった。


でも


(な、なんで。原作だと貴族として好き放題して生きるはずのラインハルト様が今ここでこんな泥臭い冒険をしているんですの?)


話は数日前に遡る。


あの時からおかしかった。


原作の流れでは私とラインハルト様は手を組みカレリアに婚約破棄を言い渡して、私とラインハルト様は束の間の幸せな時間を過ごす、というものなのに。


私は転生者だった。

転生する前はこの作品が好きだった。


そしてラインハルトという悪役も好きだった。

なによりすごくイケメンで王子様のような風貌をしていて私の好みだった。


推しだったのだ。


だからこの世界に転生した、ということを理解した時はラインハルト様と幸せな時間を過ごして死ぬ。


それもいいと思っていたのに


(恋愛要素どこですの?)


肝心の楽しみにしていた恋愛要素がゼロだ。

原作ではラインハルトとアンジェリーナは愛し合っており、毎晩熱いキスを交わしていたのに。


(どうなってやがるんですの……?)


それどころか、カレリアとの婚約破棄をしてから物語は別モノに変わった。


原作ではカレリアに婚約破棄を言い渡した後は毎日毎日奴隷の女の子に手を出したりメイドの女の子に手を出したり、ルックス以外はとんでもないクズとして最後まで描き抜かれていたラインハルトなのに。


(なんで冒険者になってるんですの?ラインハルトは)


いつのまにかストーリー変わったのでしょうか?

そう言いたくなるくらいに原作のストーリーとはかけ離れた展開になっていた。


実は原作の方はラインハルト視点でも進んでいた。


その時選択肢が出てきたりもしていた。


これはその一例ですわ。



​───────​───────​───────

【カレリアとの婚約を破棄して清々しいな。次はどうしよう?】


→公爵の令嬢と婚約しよう

・メイドをかわいがる

​───────​───────​───────​



これは婚約破棄した翌日の選択肢。

この二つしか原作にはなかったのですわ。


なのに今私の目の前にいるラインハルト様は……



​────三つ目の選択肢を自分で作り出した。



​───────​───────​───────

・公爵の令嬢と婚約しよう

・メイドをかわいがる

→冒険者になる

​───────​───────​───────



その結果。


ストーリーが意味不明になっていた。

私の目の前に広がっている光景は本来絶対にありえないものだった。


「なんの戸惑いもなく泥沼に飛び込むなんてな。気に入ったぜラインハルト。俺は分かっちまったよ。お前、ぜってぇ強い冒険者になるってさ」

「ありがとよ。アックス」


拳をぶつけ合うラインハルトとアックス。


原作のラインハルトが男と会話しているシーンなんてなかったのに、話すどころか拳をぶつけ合っている。


これはこれでとっても熱いシーンだ。


でもこれは乙女ゲー。


そんなもの求められていないんですの!


(原作の流れはどこいったんですの?)


あの、恋愛要素は?


あの、イチャラブ要素は?


それからなんで私は貴族なのに泥沼に落とされているのですか?


さっきから臭いんですのよ。泥沼の臭いが。


(あぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!もぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!どうなってやがるんですのぉぉぉぉぉぉぉぉ?!!!!!)


私の考え事に気付いたのか目を向けてくるラインハルト。


「どうしたん?さっきから黙ってもうて」

「い、いえ、な、なんでもありませんわ」


そんな言葉しか出てこなかった。


「ほんまか?なんかあったら言えや」


私は気付いていた。


(この男も転生者ですわ……絶対に)


原作のラインハルトはこんな話し方を絶対にしない。


たまに出てくるお嬢様言葉のようなもの。


あれはお嬢様言葉ではなく明らかにホンモノの関西弁。

エセとかじゃない。


私も前世で暮らしていた日本。その大阪とか関西とかって呼ばれる場所で使われていた方言だ。


発音でホンモノの関西弁だと分かる。


この男は転生者だ、と。


でも、私はそれを知っていてなおラインハルトへの想いは変わらなかった。


(原作のラインハルトはなよなよしてたけど、これはこれで……)


すごい頼りになる感じがたまらない。


悪い言い方をするならガサツ、下品、おっさんくさい、みたいな感じだけどこの顔ならばワイルド、という言葉が凄く似合っていた。


キャラ崩壊どころのレベルではない。


目の前で自分の一番の推しキャラを粉々にぶっ壊されているのに私はそれでもなおラインハルトを愛しているようだった。


どうやら私のラインハルト愛というのはこの程度では変わらないものらしい。


(いいですわ。ラインハルト様。このまま最後まで付き添いましょう)


私はそう誓うのですわ。

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婚約破棄から始まる悪役貴族の冒険者生活~女性向けのゲームに転生して婚約破棄した俺は原作要素を全て無視して最強の冒険者を目指しますわ(関西弁) にこん @nicon

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