其の弐拾捌


 えんがちょ刀はヨシナリの腰に挿される事に落ち着き、一同は帰路についた。【男に挿されるなぞ……やらしいではないか!?のうそう思わんか皆の者!!】と謎に聞こえてくる母様ボイスを、刀を擬人化するための妄想に忙しい春画描きを除いて皆が無視しつつ山道を警戒しながら進み、果たして仙人エルフの町へとたどり着いた。


 

「ネネ、今日も仙気が濃くなりそうだ。せめて明日の朝に出発するんだな」


「そうか…ならば厄介になっても良いか長よ」


「一晩泊まるくらいどうってこたぁねえよ。俺達の感覚からしたら瞬きしてる間みてぇなもんだ」


「有難い。世話になる。そうだな……ヨシナリ、カエデ!!まだ馬車にたらふく食料と調味料が残っておるだろ?全てはくれてやれんが馳走返ししてやってくれ」


「おっ坊やのご飯が食べれるのかい?こいつぁ取り合いになりそうだな!!」


「大した物は作れないよ?」


「構わねえって。おーい!てめぇら聞こえてんだろ!?得物を持ってきたヤツに優先して食わせてやるから気張れや!」



 周りで聞き耳を立てていた町の女衆が雄叫びといって差し支えない大声を上げた。目に映る者が皆、己が家へと足早に入っていく。

 しかし弓を手に張り切って出てきたは良いが、夫と思われる仙人エルフに耳を引っ張られたり頭を引っ叩かれる者もいた。「いつもそんぐらい気合い入れて狩って来なよ!!」やら「いい歳したおばさんがみっともない!!」やらと言われており、それに対して女仙人エルフは「長が気張れって言ったからさぁ!」と長に責任を押し付ける者や「人間の美男子に馳走してもらうなど一生に二度とないかもしれないだろぉ!?」と開き直る者が続出していた。美男美女で昭和のやり取りをしているのは非常に滑稽である。




 さて町の者どもにより大量に待ち込まれた食材である鳥を、カエデと町の男達と共に死屍累々の体で捌き切ったヨシナリだったが、服のそこいらに鳥血が付着しており汗もダクダクにかいている有様であった。



「坊っちゃ〜ん、湯を沸かしておいたよぉ。仕込みが終わったらぁ好きに入っていいからねぇ」


「有難う御座います」


「おう。うまいもん食えるんだろ?」


「俺の国では老若男女好きな料理だったんで美味しいと思う。唐揚げっていうんだ」


「すごい楽しみ〜!なんならぁ背中ーだけじゃなくて〜全身流してあげようかぁ?ほらぁ私のココとかぁココでぇ」


「……ゴクリ」


「がっははは!やっぱり坊やは助平じゃねぇか!」



 全身ドロドロなヨシナリを見かねた仙人エルフが風呂を沸かしてくれたらしい。中々に気遣い上手な超ダイナマイトボディである。しかし結局は睨みつけるネネとお市、グフフフと笑っているカエデの視線により背中流しは丁重にお断りを入れたヨシナリなのであった。






 「一番風呂というのも中々に嬉しいもんだ」


 

 まるで旅行に来たかのようだ。以前だったらそんな時間と金を作る事も出来なかったろう。転生様様である。


 そんなこんなをヨシナリが考えていると、遠くから女達の声が聞こえてきた。塀により分け隔てられているとはいえ隣は女湯であり、ヨシナリが入っている所は男湯である。



「流石吉田様!見事な身体つきですぞっ」


「ふっ。どうだ?この尻に落ちない男などいないであろう?」


「ネネ、調子に乗りすぎだ。俺の胸はまるで富士山のように美しく壮大ともっぱら噂なんだぜ!?なぁそう思うだろ、お市ぃ!」


「ふっ私はヨシ殿の理想の太もも持ち故、長殿にも吉田様にも負けませんよ?」


「あ゛?お市よおめぇも調子に乗っちまったな!?」


「うるさいですよぉ処女たちぃ」


「「「すみませんでした」」」



 非常に姦しい。しかしスーパーダイナマイトボデーの前では他の女達は何も言う事が出来ずに頭を垂れる他なし!

 ヨシナリは身体を洗うために湯船から出る。



「しかしヨシ殿も変わった御方だ。普通の男は威圧感を感じて嫌がるモノなのだが」


「人もそうなのか?うちの男連中も嫌がっててな」


「ワシも隠すための袴を創意工夫したが何故か見抜きおる。気付かんかったのはヨシナリぐらいじゃ」


「しかしそうなると……一番デカいお主はどう致したのだ…?」


「………無理やりぃ?」


「「「「コイツやってるわ」」」」


「そういえばヨシ殿は無駄な肉がないよな。あれだけの力があれば納得なのだが、流石に目前にしてしまうと悶々としてしまう」


「顔も良く髪も漆黒。そしてあの身体。さしずめ傾国の美男といったところですな」


 自分を美男など見る目がないと思ったヨシナリだが、褒められる事に慣れていない為に少しこそばゆい。そんな自分を誤魔化すように身体を洗い始める。



「ふぅ………。奴はワシのような美尻に帰りたいと言っていたがな。お市、身体を洗う。石鹸を忘れた故取ってきてくれんか」

「……畏まりました。少々お待ちください」



 身体を洗い終えたヨシナリは頭をワシワシと洗い始める。


 するとヨシナリには届かない、なにかヒソヒソとした声色になる。

(おい、さっきから気になってたんだが)

(うむ、この塀の先にヨシ殿がいますな……なんという速さ!吉田様、はしたないですぞ)

(何をいうか。奴と初めての契りをする約束なのだ。その権利がワシにはある!な、なにぃ!?)

(おいおいネネさんよ!俺を差し置いて面白そうな事してるじゃねえか、ん?)

(ならば某もっ!)

(声が大きい。やむを得ん、ワシは心が大海の如く広いゆえ許す。だが勘付かれるなよ。その時はお前達の屍を越えて行くぞ)

(有り難ぇ。だが俺もみすみすと死ぬつもりはねぇんでな!)

(止まるんじゃねぇぞ!?)


 ヨシナリは頭を流し終え、湯船に戻ろうと横を見やるとそこにいた。

 塀の上から胸部を露わにして鼻血を垂れ流す覗き達の姿が。



「あらぁ。見つかっちゃいましたねぇ。あらあらまぁまぁ!御立派さん!!」



 塀の上に所狭しと並べられたスライム達は、まさに圧巻この上ない。(一つだけ小さいが)

 ヨシナリの竜が反応。その動作は正に風林火山。

 竜から瞬く間に昇天する龍へと進化を遂げたそれを見た塀の上の覗き達は悲鳴にも似た声を上げた。というか悲鳴をあげていた!


「あ、あれが伝説の龍か!?竜殺しが何本あっても倒せる気がしない!ごばぁ!」(盛大に鼻血を吹き出す)


「あらあらあら!!!まぁまぁまぁまぁ!!!!」


「無理ぃ……あ、あんなのアタシ無理ぃ……」


「吉田様!?吉田様、お気を確かに!あのような一物があろうとは!某の春画のものより大きいぞ!」



 歴史が変わった瞬間である。



「何をしている!」



 そこに石鹸を持ったお市が戻ってきたようだ。塀の上の女達は1人、また1人と引きずり降ろされていく。(ネネは失神していた)


 その後、宴会が終わり次第女達はお市に宵越しの説教を受けるのだが、ひたすらにヨシナリの逸品の素晴らしさと畏怖を告げる女達に対して、自分だけご相伴に預かれなかったお市は内心憤慨するのであった。



──────────────────────


 更新遅くなり申し訳ないです…。

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