作者様の筆力の高さが読み口をめちゃくちゃ軽くしてくれているので、とても気軽に物語へ踏み込むことが可能です!
あらすじ通りに進むのですが、日常の描写や他者との会話がとてもテンポよく描かれているので次々に読み進められます。
また、そんな絶妙な日常描写の中でも緊迫感に繋がる緩急の付け方が秀逸でした。
思ったことは、犬は名づけ親に噛みついてもいいと思う、ということ、ポーションの説明の基準がひどい等ですが、読み進めたら数えきれなくなりました・・・
主人公が基本的に年齢以上に人情味があふれ、年齢相応にエロいので、鼻につく描写や不快感等は一切感じることがありません!
語り継ぐにふさわしい禁断の書物はぜひともあなた様自身の目で確かめることをお勧めします!
主人公は錬金術師です。もっと細かく説明すれば、化学薬品を作るタイプではなく、釜で道具を生み出すタイプですね。
この釜で道具を生み出すところに、この物語の肝がありまして、なんと擬人化します。
しかも道具が原型なわけですから、性能の説明から用途まで詳しく教えてくれます。経験未熟な若い主人公に、老練なアドバイザーがついたようなものですね。
かなりレアな特性を持った錬金術なわけですが、どうやら優秀だったおじいさんと大きな関わりがあるみたいです。
しかもこのおじいさん、どこか抜けたスケベじじいと思わせておいて、専門家の間では有名人だったりします。
その孫である主人公は、工房を受け継ぎまして、生まれ持った素質を開花させ、錬金術を使って商売をはじめました。
タイトルにあるように、錬金術で生み出した道具を売るのではなくて、生み出した道具(擬人化した専門家)を使って、お客さんのお悩み解決をはじめたわけです。
このお悩み解決の過程が、実におもしろい。
登場人物たちのドラマをちゃんと描いているだけではなく、ミステリーみたいなどんでん返しまで仕込んであります。
もちろんこのどんでん返しには、錬金術で生み出した道具が関わるんですよ。
まさに技ありです。
しかも全体の構成が巧みでありまして、章ごとに主題と舞台が変化します。
国内で仕事をするときも、王族との日常的な関わりから、ちょっとした事件に発展したり。
国外で仕事をすれば、そこは古都ロンドンそっくりな街並みで、切り裂きジャックにちなんだお話が展開されます。
なにより爽快なのは、主人公の性格でしょう。嫌味がなく、元気いっぱいで、それでいて少しずつ成長していきます。
もしかしたらこの主人公の最大の武器は、祖父から受け継いだ技術と才能ではなく、周囲の人間たちを仲間にしてしまう人柄かもしれません。
発想の勝利のですね!あと主人公が異世界「転生」者じゃないのが、すごく好感がもてます。そうそう、現地にある知識を使って「どうにかする」ってのが、従来の「異世界ファンタジー」じゃないですか?現代知識とか使って無双するなんて邪道なんですよ。
で、この物語は、その名まんまで「作ったアイテムが擬人化し、美女化するハーレムもの」です。私は、こういう発想好きです。そりゃ作ってくれた創作主に愛情を向けるのは自然な流れだしね。私は、どうも、今はやりのハーレムものって「男性」都合の「女性キャラ」が多すぎるというか、「ほれる」理由が明確じゃないというか、必然じゃないというか、そんな気がしてたので、こういう設定大好きです。
ちなみに、主人公は、擬人化した「かわいい女の子」とスローライフを送ったり、問題を力を合わせて解決したり、みたいなお話で、ありきたりと言えば、ありきたりなんですが、この作者が書く「アイテムから産まれた女の子」が「メチャクチャ」かわいい。ここが「この物語」を楽しむポイントだと私は思います。
ということで、普通の「ハーレムもの」に飽きたあなたが見たら「虜」になること間違いなしの名作ですよ!