星間航行時代の暦

 東銀河に存在するヒト型の星間航行四種族の内、もっとも古くから宇宙航行を成し遂げた種族はエルフェン族である。

 ただし、彼らの作成した最古の宇宙船は地球出身者テラリアンの想像するそれとはかなり異なる。

魔素マナ》の扱いに長けたエルフェン族は《魔素マナ》の力で真空の宇宙空間へと乗り出した。


 彼らの作り上げた宇宙船は、巨大な帆船と姿かたちは変わらなかった。


 空気の鎧を纏い、《魔素マナ》で浮かせて、そのまま惑星エルフェンの大気圏外へと飛び出したのだった。


 こうして宇宙へと飛び出したエルフェン族は、すぐに《光束ライトチューブ》を発見した。

 そして、ついに邂逅したヒト型の星間航行種族が、地球出身者テラリアンであった。その後、地球時間にしてほぼ一年の短い期間のうちに、ドゥエルン族と、フラットランナー族との出会いを果たした。

 この奇跡のような一年を機に、星間航行四種族は互いの暦を一致させることを約定を交わし取り決めた。


 星間航行歴interstellar travel age(略称IT)の始まりである。


 この奇跡の年をIT0年として、以後の東銀河の歴史は刻まれている。


 なお、ITの一年は、ほぼ地球の一年に相当する。

 出身惑星の軌道が異なるにも関わらず、暦が地球出身者テラリアンにとって把握しやすいものとなっている理由は、相互貿易の都合上による偶然であるとされているが、その取り決めの際に商売に聡いフラットランナー族が支配する〝宇宙交易ギルド〟の暗躍があったとも噂されている。

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東銀河百科事典(エンサイクロペディア・イーストギャラクティカ) はせがわみやび @miyabi_hasegawa

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