第3話 おっぱい((´‐公‐`))

 ついにガリアと対峙するマリューとソル。

 俺はマリューのことを見やる。

 怒りを露わにしている。

「貴様ら、この我に立ち向かうか?」

 クツクツと笑うガリア。

「面白い。貴様らの覚悟を見せてくれ」

 ガリアを両腕を伸ばし、瘴気を感じ取っている。

 マリューが勢いだけで行けないのは、ガリアが瘴気を放っているからだ。

 瘴気。

 触れれば肉を腐られ、骨を断つ。

 腐臭と刺激臭が混じり合った気持ちの悪い瘴気。

「さあ。向かってこい」

 ガリアが狂気の沙汰を見せる。

「バカ野郎。そんなに瘴気を放っていたら近づけないだろ」

 俺は焦って声をあげる。

「ははん。そんな弱気で勝てるのか。貴様らは!」

 接近してくるガリア。

 手にはロングソードが握られている。

 マリューは柔らかなおっぱいで受け止める。

 柔らかすぎて切れないのだ。

「おっぱいビーム!」

 放たれたビームは瘴気を撃ち払い、ガリアの耳をそぐ。

「ちっ」

 後退するガリア。

 瘴気を浴びたマリューはおっぱいが持つ魔力により、自己再生を始める。

「なんだ。貴様は!」

「わたしはマリュー。あんたを殺す女さ!」

 大声を上げて注意を引く。

 その間に俺が仕掛ける。

 連携した俺たちは強いぞ。

 ガリアの後ろから魔法を放つ。

 顕現された火球が音もなく、ガリアの背中に向かっていく。

「遅いな」

 ガリアがひどく退屈なようにため息を吐くと、跳躍。

 後ろにいた俺を蹴りつけ、瘴気で肌を焼く。

「ぐっ」

 剣で受け止めたが、靴に鉄板を仕込んでいるのか、切れない。

 弾き返すと、俺は魔法で風の刃を放つ。

 ガリアはしゃがみ、刃をかわす。

「貴様らの連携はたいした物だ。だが、だからこそ弱点になりえる」

 かわした風の刃は真っ直ぐにマリューに向かう。

「きゃ、キャンセル!」

 マリューの手前で魔法が消滅する。

「ほう。なかなかの相手みたいだな。まあ我には勝てぬが」

 クツクツと笑いを浮かべるガリア。

 絶対最強の不敗強者ガリア。

「甘ったるい戦闘もこれで最期だな」

 ガリアは地を蹴り超加速し、肉迫してくる。

 俺は剣を振るい、地面から槍を突き放つ

「アーススピア。簡単にはよけられないぜ!」

 ガリアはその攻撃すらも見切り、華麗にかわす。

 後ろに跳躍したことでタイミングをずらされた。

「なら――」

 俺は火球を放つ。

 難なくかわすガリア。

 だが、その後方にはマリューがいる。

 キャンセルすると、火球を割って入るようにマリューがビームを放つ。

 かわしきれずに、ビームで焼かれるガリア。

「なんと。これは……」

 おとがいに指を当てて、考え込むガリア。

「そんな余裕があるかよ!」

 ウインドブレイク。

 二つの風の刃がガリアを襲うが、両手で捕まれてしまう。

「バカな。風の、刃だぞ……!」

「貴様、我が軍に入らないか?」

 ガリアはマリューに向き直り、手を差しのばしてくる。

「何を言っている!?」

 マリューは返事の代わりにビームを放つ。

 それをかわすガリア。

「残念。フラれたか……」

 その背中に水魔法のウォーターカッターを放つ。

 水圧で全てのものを切り裂く水の糸。

 細く長い水がガリアを襲う。

「くっ」

 ガリアの腕に傷をつける。

「浅い!」

 俺は距離をとるようにバックステップする。

 今いた空間を瘴気の球がかすめていく。

「我に愚弄ぐろうなマネを!」

 ガリアは苛立つように顔を歪める。

「あんたは、わたしの討つべき相手!」

 復讐にとりつかれたマリューの最大の敵。それがガリアだ。

 マリューは大剣を振りかざし、ガリアの背中を切り裂く。

「――っ!」

 痛みでうめくガリア。

「よし。少しずつだが、あいつの動きが見えてきた」

 俺は氷魔法で氷塊を浮かべる。氷柱つららのような氷塊が身体の周囲に浮かび上がり、狙いを定めて放つ。

 ガリアに突き刺さる何本もの氷柱。

「これで最期ね。おっぱいビーム!」

 放たれた青白い光がガリアを呑み込む。

 焼き尽くす熱線がガリアの心臓を穿つ。

 今なお瘴気を出し続ける虚竜王きょりゅうおうガリアの遺体を眺めて、俺とマリューは見つめ合う。

「……あ!」

 マリューの胸がへこんでいるではないか。

「そ、その胸、どうしたんだ?」

「マナ切れね。しばらくはまた貯蔵されるとは思うけど」

 Hカップあった胸がいまではAAカップになっている。

 それにショックを受けた俺だが、やることを思い出す。

「それよりも、このガリアはどう処理するんだ?」

「悪いけど、埋めるしかないわね」

「埋める? 大地に瘴気が浸食するんじゃないか?」

「そうね。でもそれしかない」

 確かにそれ以外でいいアイディアなど浮かぶはずもない。

 俺とマリューは近くに穴を掘って道具で遺体を転がし、埋めていく。

「安らかに眠れ」

「優しいのね」

「死した者には等しい慈愛を。これ家訓かくんなんだ」

「よい家庭みたいね。わたしにはないわ」

 首を振って肩をすくめるマリュー。

「もう旅をする必要もなくなっちゃったな」

 たはははと力ない笑みを浮かべるマリュー。

 ここまで来てマリューは力尽きたのか、ひどく疲れたような表情を浮かべている。

「そ、その良かったら、俺と付き合わない?」

「え?」

 拍子抜けな声を上げるマリュー。

「俺行きたいところがあるんだ。この世界の端に」

「ふふ。それも面白いかもね」

 マリューは手を差しのばしてくる。

 俺は握手に応じ、口を開く。

「よろしく」

「こちらこそ、よろしく」

 マリューはイタズラっぽい笑みを浮かべて唇に指をあてる。

「この世の果てか。どこまで続いているんだろうな。この世界は」

 マリューは楽しそうに言う。


 近隣の街・マグネシーに到着すると俺とマリューはこれからの旅に備えて話し合う。

「俺はこのサンカに行きたいな」

「それよりも、こっちのアイアイに行きたいな。有名な温泉地なの」

「温泉、苦手なんだよなー」

「ふふ。わたしと一緒に入るチャンスよ?」

「え……!」

 驚きの声を上げる俺。

「でも……」

 マリューは虚空を見つめて、神妙な面持ちになる。

「わたし、なんで生きているんだろ」

 復讐を果たしても、気持ちが晴れた訳じゃない。

 むしろぽっかりと空いた穴を埋めることなんてできないのかもしれない。

 復讐は遂げた。

 なのに、この喪失感。

 マリューはソルがいなかったら、どうしていたのだろう。

「復讐なんてするもんじゃないな」

「そうね。わたし、空っぽだ」

 実感のこもった悲しい言葉に俺は酷く胸を痛める。

 こうしてマリューの旅は終わった。

 でも俺の旅は終わらない。


 彼らの幸せはどこにあるのか。

 案外近くの存在が幸せなのかもしれない。

 マリューのおっぱいは膨らみつつある。

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おっぱいは最強の矛盾(ほこたて)! ~短編~ 夕日ゆうや @PT03wing

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