ヤリチン幼なじみに見切りをつけました~そしたらイケメンが近寄ってきて……~

ことはゆう(元藤咲一弥)

ヤリチン幼なじみに見切りをつけました~そしたらイケメンが近寄ってきて……~




「もう、アンタとは縁切るわ」

 家族づきあいがあったが、ここまで屑な男に成り下がったのなら私は一緒に居たくなかった。





「昨日の女はキツキツでよぉ」

「よかったじゃねぇか」

「本当お前って屑だなぁー!」

 最低な会話をしている話題の中心にいるのは私の幼なじみの数藤すどう和哉かずやだ。

 和哉とは幼少時からの付き合いだが、高校当たりからぐれはじめて、今ではヤリチン屑野郎になった。



 昔「僕大きくなったらこはなちゃんのお婿さんになるんだ」と行っていた可愛い幼なじみはもういない。



 そもそも会話に混じりたくないし、もう世話もしたくない。

 なので。


「和哉。もう、アンタとは縁切るわ」


 出してないレポートの催促状を投げつけて、そう言って足早に立ち去った。


 家族には「和哉はヤリチン屑野郎になったのでもう面倒はみない」と連絡、両親はそのことを和哉の両親に伝えると話していた。

 修羅場になりそうだが、知らぬ。





 和哉と距離を置いて一週間、平和な時間が流れた。

 が、代わりにイケメンが私の前にちょくちょく現れるようになった。

冬月ふゆづきさん、レポートの提出日はいつでしたっけ?」

朽木くちきさん、レポートの提出日は今日ですよ」

「そうでしたか、二日前に出しておいて良かったです」

「私も昨日だしました」

 と、当たり障りのない会話が基本だ。

 このイケメンは朽木冬夜とうやさん。

 同じ大学の同じ学部で同じゼミに所属している。


「冬月さん、最近……数藤とは一緒に居ないんですね」

「縁を切りました。幼なじみとは言え、ヤリチンクズ野郎と一緒にいる義務はないので」

「つまり、フリーということで宜しいですか?」

「そうですが何か?」

「私と付き合ってくれませんか?」

「付き合い……ああ、女避け──」

「違います、交際してほしいと言ってるのです」

 その言葉に周囲を見渡す。

 女子はいない。

「私?」

「はい」

「マジで?」

「マジです」

「いやいや、女子から恨みを買う」

「買ったら言って下さい、私は貴方を守ります」

「……じゃあ、いいですよ」

「やった、有り難うございます!」

 彼は喜んだ様子で私の手を握った。



 後でわかった事だが、私とクズ野郎が幼なじみという事で手を出していいか悩んでいたそうだ。

 クズ野郎と同類ではないのは分かっているが、世話を焼かされているのを見て、我慢していたらしい。

 下手に手を出せば面倒な集団だからね、正当防衛に持って行くにはこしたことはない。



 一ヶ月ほど付き合って、良い彼氏だというのが分かった。

 自分を気遣ってくれたり、こちらが何かすると喜んでくれたり、幸せだなぁと感じる事が増えた。


 勉強も教え合ったりして、清いお付き合いをしていた。



 が、それをぶち壊すようにあの屑野郎がやってきた。


「おい、心花。俺の両親になんていったお前?!」

「両親? ああ、うちの両親にアンタの素行とか全部伝えただけよ、縁切るから」

「え、縁切るだって?! お、おい、昔の約束はどうしたんだよ?!」

 呆れた。

 ヤリチンクズ野郎になってたのに、昔の約束だけは覚えてるだなんて。

「アンタがそんなになったから破ることにした。変な病気もってたら嫌だしね」

 クズ野郎が震えてる。

「で、ご両親はなんと?」

「お前をそういう風にさせる為に大学に行かせた訳じゃない、今年留年したら援助は打ち切るって……」

「ご愁傷様、アンタ前期の必須とか相当落としてるもんね」

「お、お前が俺をちゃんと見てないから──」

「何で私がアンタの面倒みなきゃいけないの? ヤリチンの屑のくせして!」

 私は怒鳴った。

「お、俺が女とっかえひっかえになったのはお前がやらせてくれないから──」

「誰がやらせるもんですか。アンタみたいな屑に」

「私の彼女に何のようだ」

「冬夜……」

「け、俺の事捨ててイケメンの彼氏とはいちゃついてるのかよ」

「一年と約半年。大学でお前の面倒を見せられてきた彼女の時間を返して貰いたいものだ」

「んだと?」

「そういえば、聞いたのだがお前が抱いた女子の中で妊娠した子が出たそうだぞ」

「へ……」

「お前に責任とってもらうと、アパートに押しかけているそうだが」

「やっべぇ、なぁ心花、かくまってくれよ!!」

「自分の尻は自分でふきな!」

 私はそう言ってきびす返し、冬夜と帰ろうとした。


 すると、冬夜が私を突き飛ばし、鞄で何かを包んでいた。

 ナイフの先が出ていた。


 冬夜はそのままクズ野郎を羽交い締めにし。

「心花、警察を!!」

「う、うん!!」

 私は警察を呼んだ。





 今回の件は、クズ野郎の身勝手さから出た者だった。

 学校に誘わない私が悪い。

 勝手に彼氏を作った私が悪い。

 だから脅せば戻ってくるだろうと思ってナイフを出した。


 何つー身勝手な。

 結果、両親からは勘当され、退学を余儀なくされた。

 ついでに慰謝料を私達に払う為に借金をして、その返済に追われている。

 妊娠した子は、生まれてきた子がクズ野郎の子だったのでそっちの養育費を払えと言われているらしい。


 転落人生とはまさにこのこと。





 一方、私は会社勤めをし、冬夜と同棲を二年ほどしてから入籍した。

 式も行った。




「心花大丈夫か?」

「大丈夫」

 妊娠して、お腹は大きくなりつつある。

 愛する夫と幸せになれて、よかったなぁと私は思った。





 ヤリチンクズ野郎の面倒見てたらこうはいかなかっただろう。





 縁は切るときは切らねば、私は学んだ。

 同時に、大切な縁は大事にしなければいけないことも──






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