24. 夏休み目前!

「もうすぐ夏休みかぁ……」

扇風機の風にあたりながら自宅でまったりしていたミオは、冷たい麦茶の入ったコップを片手に呟いた。

あと一週間すれば、夏休みに入る。

この間の期末テストは、テスト最終日の前日に悪魔が封印から目覚めてしまったが、全員の力を合わせて無事に浄化。

そして、テストは誰も赤点を取ることなく無事に終わった。


「ミオちゃん、夏休みの予定は決まってるの?」

金髪のツインテールが扇風機の風でそよそよ揺れているロロンがたずねた。

「ヒナタちゃんと、どこか遊びに行こうって話はしてる。まだ場所は探している所……。あとは、家族と旅行するよ」

「いいね〜。楽しそう!旅行の時、ちょっと遊びに行ってもいい?」

「いいよ。自然豊かでキレイな場所だから、ロロンにぜひとも見てもらいたいな」

「自然豊かな場所?旅行ってどこに行くの?」

「おじいちゃんの別荘だよ。近くに川があって、別荘の側には大きいクルミの木があるの。日陰なら、凄く涼しい風が吹いて気持ちがいいんだ」

「別荘!すご〜い!涼しい場所なら、夏に行くにはぴったりだね!絶対に遊びに行く!」

ミオはロロンと笑いながら話していてハッとした。

「あ……夏休みの間、庭園での活動ってどうするんだろう」



「夏休みの間は、庭園での活動はお休み。ただ、委員会の用事とか、学校にくる日があったら、ちょっと様子を見に行ってほしいな」

気になったミオは翌日、ツバキに聞いた。

長期休み期間は、庭園の活動はお休み。出校日や、委員会での活動で学校に来ることがあれば、その時は庭園に行って様子を見てくるという風らしい。ただ、悪魔の像の封印が解けそうとか、そういった緊急時の時はすぐに行って、とツバキは言った。

「まぁ、私はお盆休み期間以外、ほぼ毎日学校に行くから……」

「え、そうなんですか?」

「受験生だからねぇ。夏休みの間も、学校が受験生向けの講座を開いてるから行くんだ」

「そっか……。ツバキ先輩、大学進学するんですね」

(受験勉強に生徒会のお仕事……忙しいツバキ先輩のためにも、庭園でのお仕事、頑張ろう)

ミオはそっと拳を握った。

「ツバキ先輩、私、もっと庭園での活動頑張りますね……!」

「ふふ、頼もしいね〜」

ツバキはニコッと笑ってミオを見た。



「ミオちゃん……いい?」

ヒナタは真剣な表情で隣に座るミオを見た。手には1枚の紙が握られている。

ミオはコクリと頷いた。

「それじゃあ……」

2人はペラッと裏を向けていた紙を表にする。

しばらく、じーっと紙を見ていた2人は、ホッと安堵した。

「良かった〜!希望してた通り、ミオちゃんと一緒の日だ!」

ヒナタの笑顔につられてミオも笑う。

紙に書かれていたのは、夏休み期間中の園芸委員会の仕事の予定表だ。

ミオとヒナタは、夏休み期間中に2度、花壇の水やりと雑草抜きの仕事をする。前回の委員会の集まりで、都合の良い日を担当の先生に伝えてあり、ちゃんと希望通りの日、そして2人一緒の日に仕事が割り振られていた。

ちょっと大変な作業も、2人一緒なら楽しくできそうだ。



委員会の集まりが終わったミオとヒナタは、秘密の庭園に向かった。

「あ、ミオちゃんとヒナタちゃん来た!」

「良かった〜!2人とも、ミナト君が呼んでるよ〜」

出迎えてくれたロロンとフェルが手招きする。

2人は小走りしつつ、首を少し傾げた。

「浜矢先輩が?」

「なんだろうね?」


ガゼボにはミナト、ツバキ、ハルキがもういた。

ミナトはミオとヒナタに気がつくと、満面の笑みを浮かべて手を振った。

「おー!音木!金森!」

「こんにちは〜!ミナト先輩、何か良いことでもあったんですか?」

ヒナタがそうたずねると、ミナトは「よくぞきいてくれたっ!」と言ってテーブルに置いてあったクリアファイルから、何かチケットのようなものを取り出した。

「水族館のチケットが抽選で当たった!!」

「わ、それはすごいですね!」

ミオは思わず拍手をする。

「それで、ミナト先輩がオレたち5人で水族館に行こうって誘ってくれたんっす」

ハルキがニコニコ笑顔でそう言った。

「え、いいんですか!?でも、ご家族とかで……」

ヒナタがそう口にすると、ミナトは「共働きで忙しいから」と言った。

「ちょうどチケットは5枚だし、母さんと父さんも、友達と行ってきたらって言ってたし。お盆の時は実家戻るから水族館とか行ってらんないからさ〜」

「ツバキ先輩、予定、大丈夫ですか?」

ミオがそっと聞くと、ツバキは笑って頷く。

「1日ぐらいは大丈夫だよ。勉強も大事だけど、ちょっとは息抜きしたいからね」


「じゃ、決まりだな!夏休み、水族館行くぞー!!」

ミナトは水族館のチケットを振りかざしてそう言った。

妖精たちも、わらわらとミナトに寄る。

「ミナト、私も水族館行きたいです」

「オレも。ちょっと気になるんだよな〜」

「ボクも〜気になる〜。ゆったり静かで薄暗い空間……安眠できそう〜」

「水族館って行ったことないから、気になる!イルカとか、ペンギンとか見たい!」

「大きなお魚さん見たいです〜!」

むぎゅむぎゅとミナトの顔や服を押したり引っ張ったりする妖精たち。

「あーわかったわかった!一緒に行こうな!」

ミナトがそう言えば、妖精たちは「やったー!」と両手を挙げて喜んだ。




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秘密の庭園管理委員会 天石蓮 @56komatuna

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