第2話 友達
誰を待っているんだろう?
セシリアは少し険しくなったチムニイの横顔をじっと見つめた。待っているのは多分手紙だ。なぜならこの所二人の行先は街に一つしかない郵便局だから。
「帰ろうか?セシリア」
「えっ?まだ着いてませんよ?今日は届いているかもですし……」
チムニイはふるふると首を振ってそして
とても悲しそうに笑った。
「来るわけないから……さ」
「チムニイ……」
そしてその日は二人は郵便局に行かずに家に戻ってきた。家に戻るとチムニイはしばらく寝ると
部屋に籠ってしまった。一人になったセシリアは
扉の前で立ち尽くした。
「何か私に出来る事は無いのでしょうか?」
セシリアがつぶやく。
でも詮索はしたくなかった。人間の街に一人で来たセシリアのことをチムニイもまた詮索はしなかったからだ。それがどんなに有りがったかったか……。
「じゃあこれお願いしようかしら?」
振り向くとそこにはいたのは、チムニイの母のレイチェル。両手に乾いた洗濯物を抱えて
忙しそうにしていた。
「はい!喜んで」
チムニイの家からはお日様の匂いがする。それはこの人レイチェルに由来するものだろうとセシリアは思っている。
レイチェルはともかく明るく、いつも家族の為にせわしなく動き回っている。
どこか悲しい匂いがするチムニイ一家をレイチェルが照らしていた。
レイチェルから洗濯物を受け取ると、慣れない手付きでセシリアはたたみ始めた。よれよれだけれどこれでも上手くなったのだ。
「セシリア上手になったわね〜。今度は
料理も手伝ってみる?」
レイチェルはいつもセシリアを褒めてくれる。その度にセシリアの胸はぽかぽか暖かくなった。
「セシリアは何も聞かないのね?」
レイチェルが真っ白なでも少し黄色ががったシーツをばはばさとたたみながら言った。
聞かないとはチムニイの事だろう。
なのでセシリアはこう答えた。
「詮索はしたくないですから。聞くなら本人に聞きたいです」
真面目ね……レイチェルは微笑んだ。
「でもそれじゃいつまでたっても平行線じゃない?
チムニイも辛いままだわ」
「レイチェルは知っているんですか?その……チムニイの待っている手紙の相手……」
さあ?
レイチェルは思わせぶりに微笑むと、そういえばねと引き出しから1セットのレターセットを差し出した。
「昔はよく手紙書いたの。かわいい便箋集めるのも楽しくてね。探してみたらまだ残っていたから
セシリアにあげるわ〜」
淡い水色のレターセット。
「手紙なんて私 書きませんし……ユリネさんとかに差し上げたほうが……」
「書かないわよ!私は」
当時にツンとした声。ユリネはチムニイの妹だ。
「鈍いわね!つまり母さんはあんたに
あのバカ兄に手紙書いてほしいと言ってるわけ
馬鹿じゃないの!」
ユリネはそう吐き捨ててバタンと大きな音をたてて外に出で行く。
「私がチムニイに手紙を……?」
それから数日セシリアはたった2枚の便箋を前に悩む事になった。
カケタルモノ @tutu1127
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