カケタルモノ
@tutu1127
第1話 届かない手紙
セシリアの柔らかなピンクの髪を風が揺らす。
もう季節は夏だ。親友のエリィとデュリスの結婚式から時はただ淡々と過ぎていく。
幸せそうな二人を見る度に、セシリアの心はじわりと温かくなった。ただ一人をのぞいては……。
セシリアはいつも不思議だった。チムニイはいつも何かを待っている。そう気がついたのは
いつの頃からだろう。誰かが訪れる度に、嬉しそうに顔を上げてそして裏切られたような顔をした。
誰を待っているのかしら?
セシリアはいつも首をかしげる。はっきりチムニイに聞いたらいいのだけど、それを聞いてしまったらもう後戻りはできないような予感に襲われた。
「ねえセシリア付き合ってくれない?」
久しぶりのチムニイの誘いに、セシリアはぴょこんと駆けてついて行く。
付き合うといっても男女の付き合いではない。
今日はどこに行くんだろう?
セシリアには仲間のエレンを探すという目的があってこの街にいるのだが、最近はついつい忘れてしまいがちである。反省。
「今日はどこに行くのですか?」
「さあ?どこでしょ?」
チムニイは青い夏の空を仰いだ。チムニイは美人だなぁとそんな時セシリアは思う。セシリアは精霊である。精霊は見た目が美しい者が多く見飽きているはずなのに、なのにセシリアはチムニイを見ると思わず言ってしまう。
「チムニイは美人ですね〜」
「あんがと。でもそれは男には褒め言葉じゃないからさ」
「ごめんなさい……」
でも綺麗だ。チムニイ.ナディレは綺麗だ。
「あっ、セシリアじゃない〜。なに?デート?
ついに付きあっちゃう?」
友人のエリィーだ。しばらく会わないうちに髪が肩まで伸びていた。会うのはエリィの結婚式ぶりだ。エリィーは相変わらず明るく、そしてセシリアとチムニイが二人でいると嬉しそうな顔をする。
「エリィー!仕事サボってんじゃねーよ!」
「なによ!デュリスのかいしょうが無いからでしょ!早く楽させてよ!」
ずいぶん前に結婚した二人。好き同士なのに
ケンカばかりでセシリアは時々首をかしげてしまう。私なら大切な人とはケンカしないのにと。
「ごめんセシリア邪魔して……」
「そんな。とんでもないです。お二人に会えて嬉しいですよ?」
慌ててセシリアが訂正すると、後ろからぬっとチムニイが割り込んできた。
「そう。邪魔なの。早く散った散った〜」
チムニイはセシリアの柔らかい手を掴むと走り出す目的地は分からないけど。
すれ違う瞬間デュリスがつぶやいた。
「お前いつまで待つつもりなんだよ……」
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