姉八十三歳、弟八十一歳



【エピローグ 回想】


「姉ちゃん。」

「ん、何か言った?」

「恩返し、出来たかなぁ?」

「え、何?」

「恩返しだよ。ほら、”空”を始めるきっかけになった。」

「ああ、恩返しね。そうだね、十分かどうかはわからないけど、出来たんじゃないのかな・・・。」

「そっかぁ、恩返し出来たのか。良かった、良かった。」


縁側から見える空は青く澄んで高かった。


「姉ちゃん。」

「ん、何か言った?」

「みんな喜んでくれたかな?」

「え、何?」

「”空”で食事をして、みんな幸せな気持ちになってくれたかなぁ?」

「そりゃ、敬史の作る定食は美味しいからねぇ。誰でも美味しいものを食べれば幸せな気分になるもんだよ。」

「そっかぁ、喜んでもらえたのか。良かった、良かった。」


庭では孫の千夏が生まれた時に植えた立派な梅ノ木が可憐な白い花を咲かせていた。

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音の連鎖 寅蔵 @kotora999

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