小さな頃、薄暗くした部屋で眠い目をこすりながら読み聞かせをきいていた時のような、そんな文章が素敵です。 螺子巻き街というゼンマイギミックあふれる職人街で、パン職人の娘ヘンリカは、『雨降ら師』のアンナに雨を降らせてもらおうとするのですが……? 優しく美しい世界の、大人と子どもの物語。あなたもぜひ、この絵のない絵本の絵を想像しながら、読んでみてくださいね。
オープニングにて調子よく謳い上げられる、韻文めいた街のイメージにわくわくが大きく高まりましたが……本文も期待に違わぬイメージの乱舞。キラキラ輝く星々、あるいはひっくり返したお菓子箱、用途の分からない工具箱……それらを文字化したらこんなふうになるのかなあ、と思わせてくれる、愉快で色彩豊かな文章を堪能させていただきました。話を追うというよりは(いやお話もきちんと作ってあるんですけども)、寄せては返すイメージの波に身を任せるのが、本作では楽しいのかもしれません。