第45話 遺言そして始まり…

「アルカ、緊張しますね」


「カナタ、今日は私達の晴れ舞台。きっと天国のカイル様も見守っていらっしゃる」


「アルカ、だからそれはないから(笑) カイル様はもう転生してる、今頃大好きなオッパイでも咥えているわよ(笑)」


 半旗が掲げられて1ヶ月が経った。今日は目を覚まされたアムル王の群衆向け演説がある。アルカ達はそこで新しい勇者パーティとして紹介されるのであった。


「マリアってそんなキャラだったの? なんか意外ね」


「シルビアに言われるとヘコみます……(笑)」


 アルカ達は明るさを取り戻しつつあった。救いになったのはマリアの言葉、カイル様の転生の話と15年後の捜索依頼〜俄(にわか)には信じ難いがカイル様が話したこと、決して嘘ではないだろう。


「では再度の確認ね、先代勇者様に頂いたそれぞれの課題、まずマリアは極秘に帝国に行って神官としての修行」


「はい」


「カナタは剣の修行をしてライトサーベルの技術を磨くこと」


「オーケー」


「シルビアと私は勇者が身に付ける防具やアクセサリーを一式集めること」


「承知」


 4人は円になんて手を繋いだ。カイル様が遺してくれた大切な絆がここにある。前を向いていこう……そうでないとカイル様に笑われる。


「では行こう!」


「はい」「オーケー」「承知」



△△△△△△△△△△△△△△△



 王城の前には王都の群衆が押し寄せている。ミトルは忙しく指示を与えている。そして、ミトルの隣りには……もう目覚めないであろうと思われていた実の弟がいる。

 

「兄さん、前を向いてくれてよかった。僕も頑張るからね、40年も眠っていたんだから(笑)」


「40年分働いてもらうからそのつもりで、マスル王よ」


 マスルは40年の眠りから覚めた。容姿は40年前と変わらず青年のままである。


「しかし老けたね、兄さん(笑) 父上って呼びましょうか?」


「お前のような不肖の息子を持った覚えはない! 群衆の前ではふざけないで真面目に演説しろよ(笑)」


「ハイハイ」




「親愛なる王国の民よ、よく集まってくれた。今日は皆に伝えることがある。まず…………」


 マスル王の演説が始まった。群衆は王が目覚めたことを噂で知っている、一目見ようと大観衆が集まった。


「我が王国、そしてこの世界の守護者たる勇者カイルは1ヶ月前、3月11日お隠れになった。そして同じ日私が目覚めた。勇者様のため3年間は喪に服せ。そして3年後、全員に姓を持つことを許そう」


 まずは勇者様の訃報、そして喪に服す発表と長年の懸案となっていた人口増加による名前問題。それを解消すべく姓を持たせるという決定を群衆に伝えた。さすが自慢の弟だ、立派に演説をしている


「そして、今日をもって新たな元号を発表する。元号は新しい世の中、新世(しんせい)とし、本日から新世元年とする。そしてこの良き日に皆に新しい勇者パーティを紹介する。参れ!」


 シルビア達が入場してきた。馬子にも衣装、どこをどう見ても勇者に相応しい。


「神の子にして新たな勇者シルビア、大賢者セフィロスの孫アルカ、英雄の剣を受け継ぐ者カナタ、聖女の名前を受け継ぐ者マリア」


 名前を呼ばれ者は王に跪(ひざまず)く。呼ばれた者は臣下の礼を取る、素晴らしい光景だ。


「これから王国のみならず、この世界の守護者としての使命を全うせよ!」


「はっ、身命を賭して」


 その瞬間、群衆の歓喜が轟いた…………。



△△△△△△△△△△△△△△△



「ミトル様、シルビア以下、パーティ全員参上いたしました」


「やっと来たか。それではついて参れ」



 ミトル様の執務室に呼ばれた。用件は聞かされていない、極秘の用事のようである。


「みんな来たか。それでは行こう」


 ミトル様は執務室を出て地下室に向かった。地下室のそのまた奥に勇者の紋章がついている扉がある。王城に数年住んでいたアルカもここは来たことがない。


 部屋に入ると……そこには棺が置いてある。そう、最後のお別れの時だ。恐らくこの部屋には防腐の魔法が施されているのだろうか、だが魔法気配は……ない。


 棺にはカイル様が花に囲まれて眠っている。今にも目を開けそうだ。


「アルカよわかるか。カイル様の肉体は永遠に朽ちない。燃やすことも、腐ちることもない、切り刻む事もだ」


「ではずっとこの部屋に……」


「いや、カイル様から遺言を預かっている。カイル様は自身の亡骸が信仰の対象になる事を避けるよう命じられた。亡骸はどこかに封印するように……と」


「カイル様の話によると、カイル様はもう転生してます。封印は妥当な判断です」


 マリアはそう言うと、カイル様に向かい祈りを捧げている。マリアの言葉には力が宿っていた、そして祈る姿は女神のようである。


「そろそろ封印先にお送りする。活火山の火口、深海の底、未開の森の奥深く……それぞれの場所に棺を安置する。だが2つは偽物だ、私や護送者も含めてどこに安置したかは分からないようにする。それがカイル様の遺言だ」


「でもお別れではありません。私達にはカイル様の思い出が生きています。残念だったのは……カイル様の望んだ7つのやることリストが途中になったことですね」


「あーそれか。アルカ、それは……カイル様のでまかせだ(笑) カイル様の願いか……シルビア、カナタ、マリア、君達はカイル様に胸を揉まれた事はあるか」


「えー、と はい」


「そうか……ならカイル様の願いは叶ってるだろう。カイル様はな……オッパイ星人だったんだ。死ぬまでに7人の生娘の胸を揉みたい、と切に仰っておった」


「げ……」「なんて…………」「えー」「…………」


「でなければまだ生きておるよ(笑) そんな面も含めてカイル様なんだよ」


「いい事聞きました! これで転生したカイル様を探すヒントが増えました(笑) オッパイ星人の少女を探せばいいんですね…………!」


 マリアの言葉に一同が苦笑する、そう、カイル様には相応しい送られ方だ。アルカは棺に話しかけた。


「15年後また、お会いしましょうね! カイル様」



△△△△△△△△△△△△△△△△



「ママ、シオリちゃんがまた私のオッパイ吸おうとするよぉ、何も出ないのに……お腹空いてるみたいー」


「えー、さっきあげたわよ。仕方ないわね、本当にすぐ大きくなりそうね。ごめんねミノリ、もう少しシオリちゃんお願いね、頑張れお姉ちゃん!」


「仕方ないなぁ、はい、おしゃぶりよ…………私のかわいい妹、大好きよ(笑)」




Gifted(ギフテッド)〜旅の始まり 続く

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転生勇者のエピローグ @aniki4649

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