「水滸伝」の時代と申せば、ああその時代の出来事か、とうなずく方もいらっしゃると思います。
その時代――靖康の変という中国史上の出来事があります。北宋という王朝が、金という王朝により都――東京開封府を落とされ、北宋は皇帝を始めとする皇族が連れ去られたという出来事です。
そしてこの掌編が描くは、あるいは亡国の皇帝、あるいは再興の南宋の人々、あるいは……。
たとえて申さば、それは――治乱興亡の間(はざま)に揺らめく、燭台の火のようなもの。そして、そこに垣間見える人々の想い……。
哀調漂う掌編ですが、切々たる哀愁を、朗々と歌い上げるようなその描写には、うならされます。
嗚呼――と。
ぜひ、ご一読を。