第7話 ノックの音がした>はしに注意

 ノストラダムスの大予言てあるよね。一九九九年をとっくの昔に無事乗り切

った今、あれを信じる人はいないと思ってたけど、世の中には強情者もいて、

くるしまぎれの解釈を続ける連中が、跡を絶たない。それだけならまだしも、

ノストラダムスは一九九九年の人類滅亡など予言しておらず、X年に我々に福

音をもたらす予言を記していた云々、私の解釈こそ正しい、てな主張をまるで

ガキの喧嘩みたく繰り広げる輩が呆れるほどいるんだから、いやはや、参って

しまう。どうやったら、彼らの目を覚まさせてあげられるか、色々と考えてみ

たんだが、妙案は浮かばないものだ。


 ――と、ここまで書いてきて、私はふと気が付いた。

 何がって、上の文章各行の先頭一文字を順に拾っていけば「ノっくノ音ガし

た」、つまりは「ノックの音がした」になるということなんだが。

 読者諸氏は、気付いておられただろうか? 気付いてた? それはまた、と

んだご無礼をば。でも、お題のアイディアに悩んでいるときにこんなことがお

きるなんて、凄い偶然でしょ? 予言かぶれ連中を腐してる場合でない。この

案を元に、傑作短編を物にせねば! そんな義務感に駆られて、私は産みのく

るしみを味わうはめになった。さっきから、脳味噌の詰まったはずの頭を捻っ

ているのだが、どうにもうまく行かないのだ。脳細胞よ、さっさと働け、この。


 ――と、ここまで書いてきて、私はふと気が付いた。

 何がって、上の文章九行の最後の一文字を拾って、逆順に並べれば、「のっ

くのおとがした」、つまりは「ノックの音がした」になるということに。


――おしまい

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ノックの音(達)がした。 小石原淳 @koIshiara-Jun

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