ぷらすいち(12/25)




 俺は三十歳、同じ年であったが十年間眠りに就いていた姫は二十歳。

 十歳の差。

 否。世の中は五十歳上でも結婚している者が居る。

 年齢なんか気にするな。

 けれど、三十と二十。

 もはや若者とは言えない三十。

 幼子におっさんと指を差される三十。

 うわこんなおっさんになったんだ離婚しよ。

 何て言われたらどうしよう。


 戦々恐々としながら、姫が目覚めて初めて会いに行った十二月二十二日。冬至プリンを手渡しに行ったら、特に何も言われずありがとうだけ。

 良かった。

 良かったんだけど。

 それだけなのかなと少しへこんだ。

 



 次は十二月二十五日。

 クリスマスなのに、働こうとする莫迦二人。

 まったく、労わる事を知らない。

 俺が夜なべして丹精込めて亜麻と岩塩と生姜で編み込んで作ったテントの中で、崖苺と蜜柑、レタス、ハムのサンドイッチと、金柑の茶碗蒸しをご馳走した。

 姫も隼士も蛇も無言で食べていた。

 ずっとだ。

 談笑を知らないのか。

 美味しいのかどうなのか若干不安だったが、食べ終わったら姫も隼士も蛇も美味しいと言ってくれたので良かった。

 蛇がクリスマスプレゼントだと言って、スカーフベルトをくれた。

 姫と隼士と蛇とお揃いだそうだ。

 超嬉しい。

 宝物にしよう。


 それからどういうわけか。

 隼士と蛇が用を思い出したと言って、テントから出て行った。

 うわ二人きりだ。

 意識しない方が変だろう。

 俺はドキドキしながら、姫を見つめようとして、こんなおっさんの顔を見られたくないと焦って下を向いて、でもやっぱり姫の顔を見たいと、ゆっくりと顔を上げた。

 姫はもう居なかった。

 うん、通常運転だ。

 と思いきや、見慣れないクリスマスカードがあった。

 宛名が俺だったので開いてみると、姫の字で書かれていた。

 メリークリスマス。

 と。

 ありがとう。

 と。

 これからもよろしく。

 と。


 ひゃっほうと俺が叫んだのは言うまでもない。











(2022.12.25)


 

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希漁火花 アドベントカレンダー2022 藤泉都理 @fujitori

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